<金口木舌>江戸の歴史と国会

 「胡麻の油と百姓は絞れば絞るほど出るものなり」。江戸時代の経世論書「西域物語」は幕臣・神尾春央の言葉を引きながら、過酷な年貢取り立てを記す

▼そんな言葉が頭をよぎったのも、国会中に「五公五民」なる言葉が論戦で登場したから。年貢の負担率「五公五民」は収穫米の半分を領主、残りを農民にという租税の一形態。2022年度は国民負担率が47.5%と半分に迫った

▼国民負担率は国民や企業が所得からどれだけ税金や社会保険料を払っているかを示す。今の税金は公共サービスの経費でもあり、負担の半面、受益もある。あくまで貢ぎ物という年貢との違いはある

▼岸田文雄首相も社会保障などに還元されているとして言葉のあてはめは「不適当」と反論した。とはいえ「還元」の中身は乏しい。荒っぽい国の運営が江戸の苛政と重なる国会でもあった

▼財源根拠が曖昧なまま防衛予算は倍増する。混乱するマイナンバーカードへも予算が追加されよう。絞られる側も我慢の限界がある。江戸のその後はどうなったか、歴史が教えてくれる。

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