「命をつなぐ私たちが必要のない世界を」犬猫処分 静岡県内は過去最少に 奮闘するボランティア【現場から、】

コロナ禍で空前のペットブームとなっていますが、長年の課題が犬・猫の殺処分問題です。多くの命が失われている中、静岡県内では2022年度、殺処分の数が過去最少となりました。背景にあるのはボランティア団体の奮闘でした。

<静岡市動物指導センター 小田雪野獣医師>

Q.こちらに3頭いますが、どういうわんちゃんですか?

「この子たちはセンターで保護・収容されたわんちゃんたちです」

静岡市動物指導センターです。3頭の犬が新しい飼い主を待っていました。

<静岡市動物指導センター 小田雪野獣医師>

「年齢がいっているのと、性格があまり人に慣れていない子、ビーグルの子は足が悪い。すぐに飼い主が決まりにくい子なのでセンターで慣らしてあげています」

一方、室内には…。

<静岡市動物指導センター 小野寺あゆ子係長>

Q.小さいですね?

「いま1か月ちょっとぐらいですかね」

近くの納屋で生まれた子猫が保護されていました。

<静岡市動物指導センター 小野寺あゆ子係長>

「去年は(静岡市で)370頭ぐらいがこのような形で収容があったんですけど、残念ながら78頭の子が殺処分になってしまいました」

県全体の殺処分件数です。10年前は桁違いの頭数が殺処分されていましたが、年々減少し続け、昨年度はともに過去最少となりました。犬は県全体で1頭。静岡市では、6年前から殺処分ゼロが続いています。

<静岡市動物指導センター 小田雪野獣医師>

「当時の職員からしたら奇跡に近い」

背景にあるのはボランティアの存在です。

<来場者>

「8歳?」

<スタッフ>

「8歳にならないぐらい…出生がわからない子が多いので、予測のところがある」

静岡市で開かれた譲渡会。この日は、犬や猫11頭の新しい飼い主を探していました。

<ラディアンテ静岡 三津山有加代表>

「折角来ていただいて、ご希望に添える子がいないと…」

<来場者>

「全然そんなことないです。かわいいです」

静岡市を中心に活動するボランティア団体、「ラディアンテ静岡」の代表・三津山有加さんです。年に10回ほど譲渡会を開いていますが、新しい飼い主が見つかるのは5件ほどだといいます。

<ラディアンテ静岡 三津山有加代表>

「保健所から引き取りの時点で、けがをしてるとか、病気の犬・猫ちゃんとか、あとはちょっと噛むわんちゃんとか。一般譲渡にも行かないし、他のボランティアも引き出しにくいじゃないですか。でも、ラディアンテ静岡はあえてそれを引き出したい」

活動資金は譲渡会で行われているフリーマーケットの売り上げとメンバーの善意です。

<ラディアンテ静岡 三津山有加代表>

「まて!行くよ!」

三津山さんの自宅にいるのは、保健所などで保護をした犬8頭と猫10頭です。

<ラディアンテ静岡 三津山有加代表>

「この子はずっと里親募集出していたんですけど、全然決まらなくて…里親募集を諦めてうちの子にしちゃいました」

自宅に戻ったと思ったら、今度は体の弱い2頭を連れ平坦な道で散歩。団体では現在、50頭の犬・猫をメンバーの自宅で保護しています。子犬や子猫はすぐに譲渡されることが多いですが、病気や高齢の犬・猫は難しいのが現状で、殺処分となる前にラディアンテ静岡が引き取っています。

<ラディアンテ静岡 三津山有加代表>

「お願いします」

静岡市の動物病院です。同じ日に別の病院をはしごする日もあるといいます。

<ラディアンテ静岡 三津山有加代表>

「やみくもに飼わない。衝動的に犬猫を飼わない。飼った後にこういうつもりじゃなかったと手放す人も実際にいるし、私のところにも連絡が来るんですね。アレルギーになっちゃったとか。想像をちゃんと膨らませて、最期まで飼えるのかどうかということをきちんと決めてほしい」

譲渡会ではうれしい再会がありました。1年前、ほとんど毛のない状態で保健所から引き取った15歳のトイプードルが新しい飼い主とともに訪れたのです。

<ラディアンテ静岡 三津山有加代表>

「すごく毛がふかふかになりましたよね。当時の面影がない。こんなに幸せにしてもらって、ありがとうって。うれしいね」

この日の譲渡会には400人以上が訪れました。

<小学生>

「目がクリクリだったからかわいかったです。もしかしたら飼うかもしれない。病気になった犬を助けたい」

人知れず、奪われている命があることを知ってほしい…。

<ラディアンテ静岡 三津山有加代表>

「犬・猫のボランティアが必要のない世界を作っていきたいなっていうことを思っているので、私が今できる精一杯のことをやっていく」

<滝澤キャスター>

こうした活動が、殺処分減少に大きく寄与しているんですね。

<植田麻瑚記者>

はい。一方、行政にも新たな動きがあります。県内には現在、3つの動物用の保健所があります。県の動物用保健所は浜松市にありますが、老朽化により、2024年度、富士市に移転することになりました。新しい場所では殺処分施設は設けず、名称も「動物管理指導センター」から「動物愛護センター」に変更される予定です。ただ、殺処分ゼロを目指すためには、行政とボランティアに頼らず、ひとりひとりのモラルを高めることが最も重要だと感じます。

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