ごみポイ捨て「3万円罰金」も摘発ゼロ 条例施行26年、京都市の事情

ごみのポイ捨て禁止と罰金を周知している看板。条例施行から26年間適用された例はない(京都市下京区)

     京都市内でごみのポイ捨てをした人に3万円以下の罰金を料す条例が施行されて26年。街を歩くとポイ捨てされたと思われる空き缶やたばこの吸い殻を見かけることがあるが、これまで一度も摘発されたことがない。罰則を設ける4政令指定都市に聞くといずれも適用例があった。新型コロナウイルス禍前は多くの観光客が京都を訪れ、一部地域でごみのポイ捨てが深刻化していたが、なぜ罰則が適用されていないのだろうか。

 京都市美化推進条例は1997年に施行され、市内全域でごみのポイ捨てを禁止している。嵐山(右京・西京区)や伏見稲荷大社(伏見区)など観光地を中心に43カ所を「美化推進強化区域」に指定し、区域内の違反者に3万円以下の罰金を科すとしている。

 市によると、条例の罰則は自治体の権限で徴収できる地方自治法上の「過料」ではなく、刑法上の「罰金」としたため、巡視員を置いておらず、違反者の取り締まりは京都府警の判断になるという。市は「ポイ捨てを抑止するという意味で『罰金』にした部分が大きい」(まち美化推進課)と「抑止力」を強調した。

 他都市はどうか。ポイ捨てに罰則を設ける札幌市、千葉市、広島市、北九州市はいずれも「過料」で、適用例がある。違反者に千円の過料を科す札幌市は2022年度に32件、過料千円の北九州市や広島市は各1件の実績があった。「過料を科したことが抑止につながった面はあると思う」と北九州市の担当者は話す。京都市でも路上喫煙の違反者には過料千円を科しており、指導員が巡回して22年度は358件で徴収するなどの実績がある。

 京都は「かど掃き」の文化が根付いており、ボランティアによる清掃活動が盛んな地域でもある。美化活動に取り組む個人・団体にごみ袋などを提供する事業の参加者数は、コロナ前の19年度までは延べ20万人前後で推移していた。市の担当者は、観光地に外国語でポイ捨て禁止を呼びかける看板を設置するなど広報活動に力を入れているとし、「条例の抑止力と京都ならではの美化活動の両輪で、ポイ捨てをさらに減らしたい」と話している。

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