フェラーリ代表、チームオーダーは「チームメイト同士で戦ってタイムを失うことを避ける」ためだったと主張/F1第9戦

 フェラーリF1のチーム代表を務めるフレデリック・バスールは、フェラーリが先週末のF1第9戦カナダGPでチームオーダーを出さず、ドライバーたちを互いに戦わせていたら“愚か”なことだったろうと述べている。

 シャルル・ルクレールとカルロス・サインツのスターティンググリッドはそれぞれ10番手と11番手で、比較的低かったことを考慮し、フェラーリはふたりに1ストップ戦略を取らせることにした。レース序盤のセーフティカー導入中にピットストップを行わなかった結果、ルクレールは4番手、サインツは5番手まで順位を上げた。

 しかしサインツは、レースでの勢いを維持するためにルクレールをアタックせずに、彼と協力してすぐ後ろのドライバーたちを寄せ付けないよう指示された。バスールはこの指示について、ルクレールを有利にするためのものではなかったと主張した。

「我々は誰かを守りたかったのではない。レースのあの段階ではプッシュし、チームメイト同士で戦ってタイムを失うことを避ける戦略を取った」とバスールは説明した。

「(エステバン・)オコンとおそらく(ランド・)ノリスとのギャップを広げようとしていたが、確かではない(実際はセルジオ・ペレスとオコン)。互いに戦ってタイムをロスしていたら愚かなことだった」

2023年F1第9戦カナダGP シャルル・ルクレール&カルロス・サインツ(フェラーリ)

 バスールは、ルクレールとサインツのコメントに後押しされてセーフティカー中にピットストップをしないことにした決断は、うまくいったとはいえ賭けだったと認めた。

「いつも多少の躊躇はあるが、はっきりしているのは、彼らのペースははるかによく、トラフィックにはまっている時は可能性があったと言っていたことだ」

「彼らは“クリーンエアをくれ”と言っていた。最善の方法はピットストップをしないことだった。それがある種のギャンブルだったのは確かだ。もし18周後にまたセーフティカーが入ったら、さらに難しい事態になるからだ。だがよい判断となった。挽回するのに最良の方法だった」

 フェラーリのレース運びは完璧だったが、土曜日の予選セッションにおけるチームの運営にはまたも混乱があり、特にルクレールはトップ10入りを逃がす有様だった。

 ルクレールはQ2の初めにインターミディエイトタイヤでコースに出たが、コンディションが急速に改善されてきたので、すぐにソフトタイヤへの交換を要求した。しかしチームはルクレールの要求を却下し、インターミディエイトタイヤでもう1周するよう指示を出した。最終的にフェラーリは、すぐに好転することを見込んでルクレールのタイヤをインターミディエイトからソフトに交換したが、コンディションが悪化しつつあるコースのことを考えると遅すぎた。ルクレールはセッション後に怒りを見せ、チームの戦略決定のタイミングが悪く、“自分を難しい状況に置いた”と公然と非難した。

 バスールは、火曜日にチームは話し合いを持つつもりだと述べたが、フェラーリは予選後の報告会でチームがルクレールの走行をどのように制御していたのか説明したので、彼は怒りを長引かせることはなかったと主張した。

「起きたことについて考えなければならない」とバスールは説明した。「この件については、火曜日に話し合いを行って解決する予定だ」

「常によりよい仕事をすることはできる。だが予選の10秒後の気持ちが常に最高というわけではないことも事実だ」

「シャルルとはよく話し合った。我々はセッション中に何が起きたのか、状況の全体像を彼に伝えた。そしてはるかに冷静になった」

2023年F1第9戦カナダGP シャルル・ルクレール(フェラーリ)

 バスールは最終的にフェラーリの戦略を擁護し、インターミディエイトタイヤからソフトタイヤへ即時に切り替えることは、無駄な遅れを引き起こしただろうと主張した。

「その時点で雨が降っていたので、できるだけ早くタイムを出しておきたかった。1周目にピットストップをしてソフトタイヤに交換した場合、タイヤを温めるのに2周かかり、最初のフライングラップが5分遅れてしまう。この段階でそれは適切な戦略ではなかった」

「おそらく彼が予選など全体像を把握していなかったことから混乱が生じたのだと思う」

「彼が時には我々の視点に立たなければならないように、いくつかの点を改善しなければならないだろう」

「(予選では)よい仕事ができたとは言えない。ペースは素晴らしかったが、10番手と11番手でのフィニッシュだった。つまり何か問題があったということだ」

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