伊豆大島に初の外国クルーズ船が寄港

港区の竹芝ターミナルから約120キロ、高速船で1時間45分ほどで到着する伊豆大島に、初めて外国のクルーズ船が寄港しました。100人を超える外国人観光客への「おもてなし」に、島の人たちが大奮闘です。

午前7時半ごろ、職員たちが大慌てで設置しているのは、「ようこそ伊豆大島」と書かれた横断幕です。クルーズ船を出迎えようと急ピッチで準備を進め、島のゆるキャラ「かめぼう」も急ぎ足で港にやってきました。

記者:「いま大島で初となるクルーズ船からの乗客が降りてきました」

伊豆大島に寄港したのはドイツの豪華客船「ハンセアティック・ネイチャー号」で、約170人の乗客が大島町に降り立ちました。大島町と東京都の職員、そして島民たちが出迎えるなか、島の名物・椿の手ぬぐいを頭に「あんこさん」の姿で歓迎するワンちゃんも。港では、地元の漁師の味を楽しんでもらおうと、地元の魚を使った荒汁で「おもてなし」です。

乗客たちは、手配されたバスや徒歩で各々自由に島内の観光地をめぐっていきます。なかでも人気は伊豆大島のシンボル、標高758メートルの火山である三原山です。

観光客:「この古い火山口はとても良い、興味深いです」「とても素晴らしい、お勧めできますね」

そして島の名物料理「べっこう寿司」を出す地元のレストランも、ドイツからの客が訪れていました。しかし、食べ方の説明が分からなかったのか、寿司を「すまし汁」につけて堪能。

おもてなしに奔走する島の人たち、その準備は前日から始まっていました。園内にドイツ語の標識を設置していたのは、椿花ガーデンの山下社長です。大島の季節の花が咲き誇るこの庭園を満喫してほしいと、標識を手作りしました。

椿花ガーデン 山下社長:「大島で咲いた緑色のガクアジサイ。「大島生まれですよ」というのをAIに聞いたらこういう風に書けって書いてありました。(なんて読むんですか?)読めない!」

そして、当日、用意していた翻訳アプリで案内を試みますが…

山下社長:「いま、アジサイが綺麗ですよ」スマホ「……」

アプリが思うように動かず悪戦苦闘。それでも徐々に操作に慣れ、次第に観光客とも打ち解けます。

観光客:「ここは私が見た中でも最高のアジサイ庭園です。(山下社長の説明は?)良かったです。説明もよく分かりました」

山下社長:「大島にとっても経済的にも(インバウンドが)とても大きなウエイトを占める時期が必ず来るはず。われわれも努力して「ぜひ行ってみたい島だ」と、輪が広がればありがたい」

コロナ禍の影響で一時、観光客が激減した伊豆大島。町では、今回のクルーズ船の寄港を「復活のチャンス」と位置づけています。

大島町 坂上町長:「お客さんがどうしてもコロナで減っちゃったものですから、なんとか回復するのに大変なんですけど、町民のみなさんもお客さんをおもてなしの気持ちで頑張りたいと思います」

島民たちの手厚いおもてなしの中、9時間ほどの滞在を終えた乗客たち。「大島」の伝統芸能「御神火太鼓」でお見送りです。そして、お別れのとき…。

観光業の復活を願う大島町。外国クルーズ船の寄港は、島の人たちを照らす明るい希望となったようです。

約50年前の「離島ブーム」のピークには、年間80万人を超える人が訪れていたという伊豆大島。近年の新型コロナが流行する前の2018年度と2019年度は観光客が20万人以上を超えていました。しかし コロナ禍で観光客数は半減。昨年度は復調の兆しを見せるも、15万人弱に留まっています。

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