マスク着用は? 声出し解禁まだ慣れず? コロナ「5類」移行後、兵庫と大阪のフェス現場では

新型コロナ5類移行後に開催された「アリフジ ウィークエンダーズ」=三田市尼寺、有馬富士公園(PhotobyHiroshi_Maeda)

 コロナ禍で大きな逆風にさらされたものの、感染防止対策など運営ノウハウを積み上げ、昨年から復調傾向にある音楽フェス。コロナの法律上の位置付けが5月8日に「5類」に移行し、対策も大幅に緩和された。フェスの現場ではどのような変化が起きているだろう。5、6月に兵庫、大阪で開催されたフェスの会場に足を運び、現状を見てきた。(藤森恵一郎)

 まず参加したのは、5月20日に兵庫県三田市の有馬富士公園で初開催された「ARIFUJI WEEKENDERS(アリフジ ウィークエンダーズ)」。同市で人気の夏フェス「ONE MUSIC CAMP(ワン・ミュージック・キャンプ)」を手がけるチームが企画したフェスで、ロックバンド「OKAMOTO’S(オカモトズ)」やインストゥルメンタルバンド「toconoma(トコノマ)」など実力派のアーティストら12組が出演した。

 5類移行後、マスクの着用は任意となった。現地へ向かう電車やバスの中ではマスク姿の人も見かけたが、会場の広大な芝生広場に足を踏み入れると、その開放感からか大半の参加者はマスクを外しているようだった。

 特に盛り上がったのが、音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」だ。声出し解禁を受け、ボーカルの詩羽は観客にコール&レスポンスを何度も呼びかけた。ステージ前では密集した観客が輪になってぐるぐると回る「サークルモッシュ」が起こり、歓声が上がった。

 「フェスが戻ってきたなと、感慨深い気持ちで見ていました」と主催チーム代表の深川浩子さん(41)はうれしそうに話す。その一方、コロナ禍前のフェスとの違いも感じたという。「コロナ禍で声出しをしないことが習慣付いたからか、(熱狂的な立ち見エリアの)ステージ前でも、お客さんはあまりはしゃがず、おとなしめだったかな」

 ライブの間には斎藤元彦兵庫県知事と森哲男三田市長も登場。コロナ禍で行政はイベント開催に慎重な姿勢を取ってきただけに、「コロナ明け」を象徴する光景と感じた。さらに、斎藤知事が「いろんな音楽フェスを県中でいっぱいやりたいなと思っています。日本一のフェスの県を目指して頑張ります」と宣言したのにも驚いた。

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 5類移行後から約1カ月。6月10、11日に大阪府泉南市の海に面した公園で開催されたビーチミュージックフェス「GREENROOM BEACH(グリーンルーム・ビーチ)」の1日目をのぞいた。家族連れが多かったアリフジ-に比べて若い参加者が目立ち、ほとんどがマスクを着けていなかった。

 ロックバンド「ALI(アリ)」のボーカルLEOが「声を出そうが歓声上げようがオッケー」と観客をあおれば、バンド「Nulbarich(ナルバリッチ)」のボーカル JQも「コロナ5類でフェスが戻ってきました」と喜びを分かち合った。

 「アーティストとオーディエンスのコミュニケーションが復活したことがうれしい。さらに海外アーティストが戻ってきたことも」と主催するグリーンルーム(東京)代表の釜萢(かまやち)直起さん(49)。

 この日は米国のスケーターでミュージシャンのトミー・ゲレロが出演。同社が5月に横浜で開催した「GREENROOM FESTIVAL」では9組もの海外アーティストがステージに立った。釜萢さんは「入国の制限が徐々に緩和されてきたので、今後は海外アーティストの招へいでどんどん動ける」と話した。

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 フェス情報サイト「Festival Life」編集長の津田昌太朗さん(37)は「集客やラインアップなどをコロナ禍前に戻そうという動きは昨年からあるが、今年はそれを100%にしようという動きが見られる」と語る。

 8月に東京、大阪で開催されるサマーソニックは全券種が史上最速で完売になるなど、大規模フェスはコロナ禍の「反動消費」で好調だという。「今年の夏から来年にかけては、一つのジャンルに特化したフェスや地域のマルシェを入れたフェスなど、コロナ禍前に人気のあった、規模は大きくないが個性的なフェスにも人が集まってくるだろう」と予想する。

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