社説:不同意性交罪 被害根絶へ認識改めて

 同意がなく、相手の意思に反した性的行為は許されない。「魂の殺人」と呼ばれる性犯罪被害の深刻さを直視すれば、当たり前のことだろう。社会全体で、その認識を共有していきたい。

 性犯罪規定を大幅に見直す改正刑法などが成立した。強制性交罪を「不同意性交罪」に、強制わいせつ罪を「不同意わいせつ罪」に名称変更し、処罰要件を被害実態に即した形で明確化した。

 これまでは「抵抗が著しく困難な程度」の暴行・脅迫などが要件だった。被害者がどれだけ拒絶したかが問われ、司法の判断にばらつきがあると指摘されてきた。

 今後は、相手が同意していなかったことに重きが置かれる。被害者らが求め、立ち上がった女性たちの訴えが結実した。

 2019年に性暴力の無罪判決が相次いだのに対し、被害者が実名で体験を語り、抗議の「フラワーデモ」が全国に広がった。切実な声に政治が応えた形である。

 改正法は要件を「同意しない意思を形成、表明、全うすることのいずれかが難しい状態」として、八つの要因を具体的に列挙した。

 上司と部下といった関係性の悪用、突然襲われた恐怖で同意しない意思を示せなかったケースなども含まれ、これらに「類する」場合も処罰する。

 だが今後の検討に委ねられた論点もある。公訴時効は不同意性交罪が15年と、それぞれの罪で5年延長されたものの、自責の念などから申告が遅くなることは多く、とりわけ幼少期の性虐待は被害認識に時間がかかる。

 冤罪(えんざい)を招かない注意も必要だ。処罰要件には「難しい状態」「類する場合」など曖昧な点があり、適切な運用が求められる。

 本当に実態を捉えたものとなったか、施行後の調査などフォローアップが欠かせない。処罰だけでなく、相手への思いやりを高める性教育も充実させたい。

 今回の法改正では、子どもの被害を防ぐため、性的行為に同意できるとみなす「性交同意年齢」を13歳から16歳に引き上げた。わいせつ目的で16歳未満に金銭提供を約束するなどして手なずける「面会要求罪」も設けた。

 盗撮被害への対処を目的に「性的姿態撮影罪」も新設したが、アスリートのユニホーム姿の撮影は対象外となった。社会問題化しており、京都では条例を根拠に摘発している。有効な規制の在り方について国でも引き続き議論が求められる。

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