冷夏予想が一転、今夏猛暑に? エルニーニョ発生も、複雑にからみ合う三つの「異変」

今年もやっぱり猛暑!? 強い日差しの中、工事が進む「海の家」=19日午後、神戸市須磨区の須磨海岸

 世界に異常気象をもたらす「エルニーニョ現象」が4年ぶりに発生した。日本では一般的に冷夏になりやすいとされるが、今夏は西日本などで猛暑になりそうだという。なぜなのか。背景には、太平洋からインド洋にかけて複雑にからみ合う三つの「異変」があるらしい。

 南米沖の海面水温が高くなるエルニーニョ現象は、数年おきに発生する。フィリピン付近では逆に水温が低くなるため、日本列島は夏の高気圧の張り出しが弱まり、低温になる傾向が強い。気象庁によると、今年春に発生したとみられ、秋まで続く可能性が高い。

 ただし、同庁が20日に発表した3カ月予報(7~9月)は「冷夏」の予想でなく「猛暑」の恐れだった。近畿地方の平均気温は「平年より高い」確率が50%。「平年並み」(30%)「平年より低い」(20%)を上回った。

 その理由は何か。

 

47年ぶり珍事

 エルニーニョでは通常、南米をはじめとする熱帯域で暑くなる。ところが、今回は「南米などにとどまらず、広範囲に大量の熱量を放出している。その影響が日本にも及ぶ」と同庁。その勢力の強さを「スーパーエルニーニョ」と表現する専門家もいるほどだ。

 さらに猛暑をもたらす要因があと二つ。一つは、この冬まで続いていた「ラニーニャ現象」の影響がまだ残っていること。

 ラニーニャは、エルニーニョとは逆に南米沖の海面水温が低くなり、フィリピン付近では高くなる状態をいう。そのため、積乱雲が活発に生み出されて、日本付近の高気圧の張り出しにつながり、夏は暑くなることが多い。

 冬がラニーニャだった直後の夏にエルニーニョが発生しているのは1976年以来、47年ぶりの珍事という。

 もう一つは「正のインド洋ダイポールモード現象」の発生が見込まれることだ。聞き慣れないが、これも数年おきに現れる現象で、インド洋西側の海面水温が東側より高くなる。ラニーニャと同じく、フィリピン付近で積乱雲を多く生み出すため、日本に高温をもたらしやすい。

予測困難

 気象庁異常気象情報センターの楳田貴郁所長は「エルニーニョ、ラニーニャ、ダイポールモードの3現象が同時に影響し合うのは、かなり珍しい。前例がないような複雑な状況で、この夏の天候はとても読みづらい」と話す。

 こうした状況を受け、気象災害への警戒も強まっている。近畿の梅雨明けは平年7月19日ごろだが、エルニーニョ現象下では遅れる傾向もあり、総雨量の増加が懸念される。特に梅雨末期は、集中豪雨が発生しやすい。

 全国62の学協会でつくる一般社団法人「防災学術連携体」(東京)は12日、オンライン会見で注意喚起。東大の中村尚教授は「地球温暖化で(豪雨、猛暑などの)異常気象が起こりやすくなっている。特に今夏は湿った空気が南から列島へ流れ込みやすい」と大雨への備えを呼びかける。

 熱中症への備えも必要だ。日本医科大の横堀将司教授は「熱中症の4割は屋内で発症している」と強調。「エアコンの使用でリスクは抑えられる。独居高齢者や乳幼児、経済的に苦しい人たちなど『熱中症弱者』を地域全体で見守る必要がある」とする。(上田勇紀)

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