高校教師が生徒相手に【権力を振りかざし散らかしてクビになった】事件です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼ こんな大暴れ
━━━━━━━━━━━━━━━━━
・生徒の股間を触る
・「大学推薦の取り消し」をチラつかせる
・出たくもないコンテストの出場を強要する
・カラオケで「これに着替えてくれ」
・宣戦布告LINEを送信
X先生は雇い止めされます。
X先生
「この雇い止めは無効です」
裁判所
「いや雇い止めOKです」
「教員として極めて不適切な行為ですから」
以下、分かりやすくお届けします。
（学校法人暁星学園事件：東京地裁 R4.8.22）（弁護士・林 孝匡）
※ 裁判を一部抜粋し簡略化、判決の本質を損なわないよう一部フランクな会話に変換しています
事件の当事者
━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼ 会社
━━━━━━━━━━━━━━━━━
・学校法人
・中学校、高校を設置
━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼ X先生
━━━━━━━━━━━━━━━━━
・非常勤講師（社会科）
・初回は2年契約
・その後、1年契約（4回更新）
━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼ 生徒A・生徒B
━━━━━━━━━━━━━━━━━
・高校3年生（男子）
どんな事件か
━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼ X先生の機嫌を損ねたくないな
━━━━━━━━━━━━━━━━━
生徒A・Bは「この先生の機嫌を損ねたくないな」と考えていました。なぜなら、生徒A・Bは推薦入試の受験を考えていて「X先生が推薦の一手を握っている」と考えていたからです。
生徒A・Bは、X先生から受験指導を受けてました（小論文や面接対策など）。さらに関連してビジネスアイデアコンテストの指導も受けていました。
ーーー このビジネスアイデアコンテスト、キャリア甲子園でしたっけ、受けたかったんですか？
生徒A
「全然受けたくなかったです」
これも、推薦のためですな...。
さて、順番にX先生のチョンボを見ていきましょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼ LINE交換
━━━━━━━━━━━━━━━━━
高3の夏休み前、X先生は生徒A・BとLINEを交換します。
■ 注意！
中高生の皆さま！ 先生に連絡先を教えなくていいです。連絡先を聞いてきたら保護者か別の先生にチクりましょう。LINEを聞いてくるやつにロクなやつはいません。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼ 生徒の股間を触る
━━━━━━━━━━━━━━━━━
飲食店を出て、歩いているそのとき！
X先生は生徒Aの股間に向けてパンチするような動作をして、股間を触りました。
ーーー X先生、不服そうですが。
X先生
「生徒Aがエスカレーターの2段上にいたんです。そのときに私が生徒Aの股間を殴るふりをしたところ、あやまって手が触れたにすぎません」
裁判所
「その反論は通らないですね。だってあなた、後日、生徒AにTELして『正直、股間にパンチをしたのは。何か。もう何か弁解の余地はないかもしれないけれど、それも何か別に、ふと、ごめん』と謝ってますよね」
「あと、あなたの主張がコロコロ変わってるのよ。訴状では『公道を歩いているとき』って言ってるのに、その後『エスカレーターに乗ってるとき』になってたり。なので生徒Aの言い分の方を信用します」
■ マメ知識
裁判所は言い分をコロコロ変える人を信用しません。主張の変遷に「ビクッ！」とします。誰かを訴えたいときには大木のようなブレない主張を心がけましょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼ ウザイ勧誘
━━━━━━━━━━━━━━━━━
X先生がしつこすぎです。生徒Aに「キャリア甲子園に応募させてほしい」としつこく勧誘します。生徒Aが嫌がってるのに執拗（しつよう）に。以下、判決文から一部抜粋しますね。
X先生
「やりましょうよ」
「どうか、どうか。何でもするから」
生徒A
「無理ですよ」
X先生
「土下座してもやらない？」
「1発殴ってもいいよって言ってもやらない？」
なぜそこまで出場させたいのか！
ーーー 裁判所さん、いかがですか？
裁判所
「生徒に不快感や不安感を抱かせるものだ」
━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼ 泣きながらTEL
━━━━━━━━━━━━━━━━━
【X先生が】生徒Aに泣きながらTEL。関係を修復してほしいと。以下も一部抜粋。
X先生
「正直、股間にパンチをしたのは。何か。もう何か弁解の余地はないかもしれないけれど、それも何か別に、ふと、ごめん。」
「作文の方もやらせてもらえませんか」
「志望理由書と小論文の方だけはやらせてもらえない？」
■ 男気あふれる生徒A
会話の中で、X先生は「自分は退職するかも」と匂わしたんです。生徒Aは焦ります。X先生の受験指導をストップさせると、生徒Bも受験指導が受けられなくなってしまうかも...と思ったんです。苦渋の決断として、X先生から受験指導を受け続けることをOKしました。生徒A君は漢（おとこ）ですな。
ーーー 裁判所さん、いかがですか？
裁判所
「生徒に不快感や不安感を抱かせるものだ。自身の退職や受験指導の中止をも引き合いに出している」
━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼ ハシゴ外しをほのめかす
━━━━━━━━━━━━━━━━━
生徒AからX先生のLINEをブロックしました。ウザかったのでしょう。グッジョブです。
すると、X先生は生徒BにLINE。
====
「では、伝言をお願いします。一般入試を頑張るようにと。それでは、また明日スィーユー」
====
一般入試だと！ 生徒Aは「指定校推薦が取り消されるかも...」と不安になり、またX先生とのLINEやりとりを再開させました。かわいそう。
ーーー 裁判所さん、こんな先生、野放しにしていいんですか！
裁判所
「生徒の不安をあおっている。生徒への脅しとも受け取られかねない不利益の告知だ」
その後、2人は無事、合格できました。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼ 性的なプレゼン動画を見せる
━━━━━━━━━━━━━━━━━
お次は、キャリア甲子園の話です。X先生は他校のプレゼン資料を生徒ABに見せました。それがですね・・・バナナを男性器に見立てている写真などです。
裁判所
「見た者に性的な不快感を与える」
━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼ これに着替えてほしい
━━━━━━━━━━━━━━━━━
カラオケ店の個室での出来事。X先生は生徒ABに「この服に着替えてほしい」と伝えました。「着替えないなら帰る」と駄々をこねたので、生徒ABはイヤイヤながら着替えました。
そして、X先生は着替えたあとの生徒を写真撮影しました。
裁判所
「不快感や不安を覚えていた」
━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼ 吐き気をもよおすLINE
━━━━━━━━━━━━━━━━━
X先生は生徒にこんなLINEを送信します。
====
「気分は愛人です」
「ちゃんと相手してくれないから、しばらくすねるね」
「彼女とのやりとり風」
「付き合うならどっちにしようかな」
====
ーーー 裁判所さん、トイレに行って吐いてきてもいいですか？
裁判所
「生徒に特別な感情をもっていること、または、生徒を性的な対象と見ている。教員としての品位を欠くことは明らか」
━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼ 宣戦布告
━━━━━━━━━━━━━━━━━
関係がこじれたようで、X先生が宣戦布告をします。
====
・生徒BへのLINE
「ここまでやられたら私は戦うしかないですわ」
「不本意な結果になって申し訳ないですが」
・生徒ABがいるグループラインに
「不本意ですが行動に移ります。詳細が決まり次第連絡します。残念です」
====
裁判所
「何らかの攻撃的な措置をとることを予告する内容。恐怖心を抱かせた」
最終ジャッジ
裁判所
「雇い止めはOKです」
「生徒への配慮を著しく欠く言動を繰り返し、不快感、恐怖心や不安を与えており、これらは生徒や保護者の信頼を損なう行為だから。更新拒絶には客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当だ」
以下の条文を基に判断しています。
====
労働契約法 第19条
有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
1 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
2 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。
====
他方、
━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼ X先生は立派な先生です！
━━━━━━━━━━━━━━━━━
という声もあったようです。X先生の復職を求める陳述書が多数提出されたからです（判決文を見るにおそらく21通くらいは）。
陳述書には「教育熱心な優れた先生」「生徒からも信頼されていた」という内容が記載されていたようです。
ーーー 裁判所さん、こんな意見もあったようですが？
裁判所
「陳述書の作成者が本件トラブルを正確に認識した上でX先生の復職を求めているとは認めがたい」
■ マメ知識
裁判所は陳述書の証拠価値をポエムくらいにしか考えていません。陳述書って言いっぱなしですから「ホンマかいな？」とサラッと流されます。キチンと裁判所に出頭して尋問を受けて初めて土俵に上がれる感じです。
最後に
中高生の皆さま！
1％くらいの確率でヤバイ教師がいます。どこの業界にも1％くらいの“腐ったみかん”がいます（弁護士もそうですが【センセー業界】では“腐ったみかんパーセンテージ”が上がります。センセーと呼ばれて図に乗ってるバカが多いからです）。
「こいつヤバイな...」と感じ始めたら保護者や他の先生に相談しましょうね。
