栃木県警初、強行事件担当の女性刑事課長 宇都宮南署と那珂川署の2人

宇都宮南署の別井刑事1課長(右)と那珂川署の下山生活安全刑事課長

 殺人や強盗事件などを捜査指揮する女性刑事課長が今春誕生した。強行事件担当としては栃木県警初。宇都宮南署刑事1課長の別井三美子(べついみみこ)警部(50)と那珂川署生活安全刑事課長の下山優子(しもやまゆうこ)警部(46)だ。24、25の両日は日光市内で、先進7カ国(G7)男女共同参画・女性活躍担当相会合が開かれる。“男社会”とされる県警で女性活躍をリードする2人。捜査に全力を尽くし地域の安心安全を守る。

■周囲に支えられ育児両立

 別井警部は大学卒業後に警察官になった。「人の助けになる仕事がしたい」。労働基準監督官の父と教員の母の姿から、将来を見据えた。「犯人を捕まえることで地域の役に立っている」とやりがいを感じる。

 夫も警察官。2人の子どもは社会人になったが、育児と仕事の両立は容易ではなく、退職がよぎったことも。長男が2歳の時、血液の病気で4カ月入院した。看病のため病院に寝泊まりしながら通勤した。精神的に疲弊したが、職場の理解や人間関係に支えられた。

 生活安全部門が長く、刑事部門は初めて。昼夜問わず発生する事件や火災などに対応する。厳しい現場だが「想定内。大変とは感じず充実している」と話す。

 印象に残るのは13年前、女児が被害に遭ったわいせつ事件だ。女児は当時の娘と同い年。母親目線で寄り添い続け、女児の証言が容疑者摘発につながった。

 県内では刑法犯の認知件数が急増している。育児と両立できる職場づくりに気を配りつつ、「スピード感を持って被疑者を検挙することが使命」と語った。

■背伸びせず部下から信頼

 「優しさ、頼もしさがずっと記憶に残っていた」。下山警部は東京都出身。小学生の時、母親と出かけたJR上野駅で迷子になった。不安ばかりが募る中、お巡りさんが駆け寄り優しく声をかけてくれた。憧れから自身も同じ道を志した。

 主に刑事と警務部門を歩み、県警捜査1課時代には日光市(旧今市市)の女児殺害事件の捜査に従事。「被害者の無念を晴らす。自分がやらなければ」との思いで聞き込みに当たった。

 刑事部門は同課勤務以来、約10年ぶり。生活安全刑事課長に就いたことに「驚いた」と話す。「背伸びせず、分からないことは周りに支えてもらう」との姿勢で、課員一丸となって捜査や防犯に向き合う。「女性の上司がいるのは頼りになる」。部下の女性警察官からはそんな声が聞かれる。

 時には署に泊まり込むことも。警察官の夫の存在が心強いという。「地域の平和を守るため犯罪の芽を摘んでいきたい」。憧れた警察官と同じように、地域住民らに優しい視線を向ける。

「地域の安心安全を守りたい」と語る宇都宮南署の別井刑事1課長=6月上旬、同署
課員と一致団結して捜査に当たっている那珂川署の下山生活安全刑事課長=6月上旬、同署

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