大津にキャンプ場を開設、その名も「HAPPY山」 脳の病気患い、アパレル店を閉める 同じ後遺症に苦しむ人に

訪れた人と一緒にお酒を飲んだり会話をしたりするのも楽しみという高杉さん(大津市)

 滋賀県大津市の田上地区内の山の中に「HAPPY(ハッピー)山」と名付けたキャンプ場を整備した高杉謙太郎さん(52)、今年1月に営業を開始した。利用形態は、1人だけの「ソロキャンプ」を中心に1グループ2人までに限定した。「静かにゆっくりと自然を楽しんでほしい」との願いからだ。

 田上地区で育ち、現在も同地区に住んでいる。20代後半からアパレル店を経営してきたが、10年ほど前に脳の病気を患い、後遺症もあって店を閉じた。その後、リフォームとリノベーション、オーダー家具を扱う工房を構えた。約20年前から、自然の中で遊べたらと山の中の土地を探していた。自身が子どもの頃から駆け回ってきた野山に適地を見つけ、バーベキューなどができる「プチテーマパーク」として2018年から提供してきた。「訪れた人たちが一番楽しんでくれていたのがキャンプだった」と、キャンプ場として再整備した。

 川のせせらぎや鳥の声が響き、広葉樹や杉の木立の中に19区画のテントサイトが広がる。キャンプ場には山から引いた水の洗い場はあっても電気はなく、夜には満天の星が広がる。「本当の自然を感じてほしいんです。今はスマートフォンがあればなんでもできるけど、不便の中でそのありがたみを知ってほしい」

 自身も患った脳の病気では、後遺症で苦しむ人が多いという。この地に足を運んでもらい、同じ悩みを抱える人たちが自然の中でリラックスしてもらえるような活動をしてもらえたら、と願う。「訪れる人たちが喜んで、楽しんで、ハッピーになれる場所にしたい」

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