東京高裁「同性婚訴訟」の控訴審はじまる 「周囲の理解進んでも制度の壁ある」原告らが意見陳述

裁判後の会見の様子。左から佐藤真依子弁護士、小野春さん、小川葉子さん(6月23日 霞が関/杉本穂高)

同性同士による婚姻が認められていないのは憲法違反だとして同性カップルらが国に1人当たり100万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が、6月23日東京高等裁判所で開かれた。

控訴は、昨年11月の東京地裁において、同性同士で家族になる法制度がない状態は「違憲状態」であるとの判決が下されたが、具体的な法制度の制定は国会に委ねられるとされ、賠償請求は棄却されたことを受けてのもの。同性婚をめぐる違憲訴訟は、東京のほか、札幌、名古屋、大阪、福岡でも提起されており、札幌と名古屋では違憲、福岡と東京で違憲状態、大阪では合憲の判決が下されている。

地裁判決から明らかになったこと

札幌地裁では、14条1項違反で違憲、大阪地裁は合憲だが将来の違憲可能性を明示、名古屋地裁は24条2項および14条1項違反、福岡地裁では24条2項違反状態、そして、東京地裁では憲法24条2項に対して違反状態が認められた。

「結婚の自由をすべての人に」訴訟・弁護団は、これらの地裁判決によって以下のことが明らかになったとしている。

・同性間の婚姻の法制化は憲法違反ではない
・国が同性間の婚姻を認めないのは、「婚姻制度の目的は自然生殖可能性のある関係性の保護」を理由としていること
・同性カップルの実態が異性カップルと異ならず、婚姻の可否は同性カップルにとっても「重要な人格的利益」に関わること
・現状が憲法違反であること

東京地裁の原判決では「人格的生存に対する重大な脅威」と指摘されており、かなり踏み込んで命の問題であると認識されたとのことだ。

各地の原判決について、弁護団は画期的なものだとした上で、現行の婚姻制度に同性カップルが含まれない点については憲法違反が認定されていないことを指摘。どの原判決も、家族になる制度がないことに対して違憲ないし違憲状態を「指摘」するにとどまっているという。

弁護団は、控訴審ではこの現状を後退させず、さらに現行の婚姻制度から排除されている状態が憲法違反であるという主張を認めさせることを目標にしていくとのことだ。

控訴審のポイント

控訴審における弁護団の主張として、同性カップルが被っている不利益の大きさを訴えていくこと、婚姻が生殖のためという社会通念の誤りを追求すること、婚姻に類する別制度(パートナーシップ制度など)ではうまくいっていないという海外の事例を紹介しつつ、現行の婚姻制度に同性カップルを含める必要があることの立証を挙げた。

弁護団は、「これまでの地裁判決は画期的ではあるが、それでもまだ伝統的な婚姻関係への配慮が見られ、それが障壁となっている。その社会通念自体がすでに一般市民の間で変化していることを証明していきたい」とのことだ。

弁護士「世論が大きな力になっている」

この日の控訴審で意見陳述した原告の小野春さんは、同性パートナーと3人の子どもを成人させている。「ごくありふれた家庭を築いてきたし、周囲の理解も進んでいる、それなのにどれだけ努力しても、病院での入院手続きができないなど超えられない制度の壁がある」と語った。

同じく意見陳述にのぞんだ原告の小川葉子さんは、長年パートナーと一緒に暮らしてきたが今年還暦を迎えた。陳述の中では、ずっと地域社会にも溶け込んで暮らしてきたが婚姻の平等というスタートラインに立てない自分たちのような存在がたくさんいることを語った。

弁護団の佐藤真依子弁護士は、若い世代を代表して、婚姻が異性だけのものに限られていることがいかに多くの若者の希望を奪っているかを訴える陳述を行った。

裁判後の会見で、同弁護団の中川重徳弁護士は、裁判長の強い意気込みを感じたと振り返った。「訴訟を進める上でのかなり踏み込んだ整理があった。裁判長はかなり勉強してきている印象」とし、論点をクリアにしてくれたことは歓迎したいと語った。

加えて、「大半の裁判官が『憲法違反とまでは言えないだろう』と考えていたと思うが、さまざまな研究者や世論の声が大きな力となって、それが変わってきた。目指すゴールに向かって、裁判官をどう導いていくのか、法廷内外でアイデアを出し合っていきたい」と今後の裁判への抱負を述べた。

中川重徳弁護士、佐藤真依子弁護士

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