「川の濁りひどく危険だし心苦しい」太田川のアユ釣り中止 観光にも影響…回復しないわけは?

2022年9月の台風15号や23年6月の記録的豪雨などの影響を受けた静岡県西部を流れる太田川で、名物「アユ釣り」の中止が決まりました。その原因はなかなか収まらない”川の濁り”でした。

森町から遠州灘に向かって流れる太田川。静岡県内有数のアユ釣りのスポットとして知られていますが、いまピンチを迎えています。

<太田川漁業協同組合 山本俊康組合長>

「濁りのひどい川に台風の被害で傷んでいるところに来ていただいてもねぇ。危険でもあるし、釣りにもならない。そういう理由で私たちは来ていただいても心苦しいので今年のアユを釣ることをあきらめたということです」

太田川漁業協同組合の組合長、山本俊康さんです。組合は6月11日、2023年のアユ釣りの解禁を見送る決定をしました。その原因は記録的豪雨による川の濁りです。

アユの主なエサは水中の岩に生えるコケ。コケは太陽の光を浴びて成長しています。しかし22年の台風15号や6月の記録的豪雨によって太田川の水が濁り、太陽の光が水中に届かなくなったことでコケが生えなくなり、アユが育たない環境になってしまいました。アユ釣りの解禁見送りに地元の釣り人は…。

<地元の釣り人>

「いやぁ、楽しみにしてたけど非常に寂しい思いです」

川の濁りは地元の観光にも打撃を与えています。

<アクティ森 総務担当 小野田泰一郎さん>

「川の濁りがひどい状況ですので、普段であれば、こちらの池に川の水を引いて水が張っているという状態なんですけど、今はその水を引き入れることができないので干上がってしまっているという状況」

アウトドア体験などができるアクティ森では、例年多くの子どもが参加するアユのつかみ取りについて、23年はその開催方法を決めかねている状況です。川の濁りが終息しないのには理由がありました。

<太田川漁業協同組合 山本俊康組合長>

「平成21年にダムができて、それ以降、ダムの濁りが長期化しているので」

組合によりますと、2009年に太田川ダムが完成してから大雨の後は数か月にわたって下流域で濁りが発生するようになりました。県は対策検討会を設置し、対応を検討していますが、大きな進展はなく、2年連続で太田川を襲った記録的大雨が追い打ちをかけたのです。

また、太田川の流域には記録的豪雨により道路が崩落した場所もあり、組合は釣り人の安全確保や早期の復旧なども考慮して、アユ釣り禁止の決定をしたということです。組合は県に濁りの対策や水産資源の保護などを求めています。

<太田川漁業協同組合 山本俊康組合長>

「子どもたちが夏休みになると家族連れで遊びに来るというところなんですけど、この濁りの中で泳いでいる姿を見ると本当に心苦しいなといつも見ています」

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