一升瓶足りない 県内酒造会社、対応に苦慮

全国的に流通量が不足している一升瓶=砺波市三郎丸の若鶴酒造

  ●製造大手が生産中止 コロナ影響、需要回復で拍車

 全国的な日本酒の一升瓶不足が、酒どころ富山を直撃している。昨年末、コロナ禍でガラス瓶の大手メーカーが一升瓶の生産を中止した。飲食店に活気が戻り、一升瓶の酒の需要も回復してきた中、富山県内の酒造会社では酒の出荷に対して瓶の確保が間に合っておらず、関係者は「まさか瓶がなくなるとは」と頭を悩ませている。瓶不足はしばらく続くとみられ、日本酒出荷のピークである年末に向けて、不安を募らせる。

 「瓶を発注してもすぐに届かない。なんとかつないでいる状態」。若鶴酒造(砺波市)の担当者は、こう嘆いた。

 同社では今年に入り、外食業界の需要回復や祭事の復活などで一升瓶(1.8リットル入り)の酒の出荷量が前年比113%に伸びた。しかし、3月ごろから瓶を卸す商社から「瓶がない。待っていてほしい」と言われるようになり、通常、注文から1カ月で届いていた酒瓶が3カ月かかるようになったという。

 一升瓶が不足する要因に新型コロナウイルスの影響がある。日本ガラスびん協会によると、2019年は4936万本だった出荷量は、20年が4076万本、21年が3892万本と落ち込んだ。もともと若者の酒離れなどで日本酒の出荷量は減少傾向だったため、コロナ禍は瓶製造業者にとって痛手だった。

 一升瓶を製造する日本の大手3社のうち、石塚硝子(愛知)が昨年12月に工場の稼働を取りやめた。他社も生産ラインを縮小したり、人件費削減のため従業員を減らしたりしたため、製造量を戻すのに時間が掛かる。

 若鶴酒造では7月分まで一升瓶の在庫はあるが、日本酒の出荷のピークである12月に向け、瓶の確保に苦心している。紙パックなどの代替品は、設備投資に費用がかかるため、現実的ではないとしている。

 三笑楽酒造(南砺市)は、コロナ禍で飲食店が休業し、瓶の回収、リサイクルが進まなかったことも瓶不足の一因とみる。瓶メーカーの減産に備え、昨年から在庫の確保に努めていた。担当者は対策として「早めに注文するしかない」とぼやいた。酒離れ、瓶の製造量減少は今後も続くとみており、「いつか一升瓶を外国から輸入しないといけない時代がくるかもしれない」と話した。

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