●週末1時間半待ちも
石川県内の運転代行業者がドライバー不足にあえいでいる。新型コロナの5類移行に伴って繁華街に酔客が戻ったものの、運転手が足りないため全ての車両を稼働させることができず、週末には依頼を受けてから到着まで1時間半かかることも。「2024年問題」への対応を迫られる物流業界と同様、運転代行やバス、タクシーといった旅客運送業でも人材難が深刻な課題となっている。
県運転代行協会によると、加盟18社の運行車両はコロナ前の2割減の約70台となっている。実際の所有台数の合計はさらに多いが、ドライバーが少なく、ほとんどの事業者が「休眠状態」の車両を抱えているという。
6台の車両を保有するマックワン運転代行(金沢市)には6月上旬の週末、次々と予約の電話が舞い込んだ。ただ、出動したのは4台だけで、残り2台は会社の駐車場に止められたままだった。
同社の担当者によると、この日は「どこに電話してもつながらん。どれだけでも待つから来てほしい」との要望もあり、結果的に1時間20分待ってもらうケースもあった。
各事業者は運転手を集めようと従業員の待遇改善を急ぐ。マックワン運転代行は入社祝い金を用意するなどしてドライバーを募集するが、千田耐社長は「求人を出しても人が全く入ってこない」と嘆く。
9台の車両を持つ小松タウン代行(小松市)でも2台を動かせていない。1台当たりの売上高はコロナ前まで戻ったものの、車両をフル稼働できない影響で全体の売り上げは8割程度にとどまる。
中川健治社長によると、運転代行はタクシーと異なり、軽トラックから高級車まで、さまざまな車種を運転する必要がある。中川社長は「どんな車も運転し、車庫入れできる技術が求められる。そうした点がリスクと認識されているのかもしれない」と話した。
業界関係者によると、加賀市周辺では同業者との価格競争も激しい。燃料高でも値上げをこらえるケースが多く、事業者は人手不足と利益圧迫の二重苦にさらされている。東京運転代行(同市)の髙田真琴社長は「うちだけ値上げしても客が離れるだけ。何とか持ちこたえたい」と苦しい胸の内を明かした。
●根絶条例で需要増か
県警によると、今年1~5月末時点の飲酒運転摘発件数は142件(前年同期比75件増)で、過去10年で最多だった昨年の340件を上回るペースで推移している。
県運転代行協会事務局長を務めるマックワン運転代行の千田社長は、県が4月に「飲酒運転根絶条例」を制定したことが運転代行の需要増につながっているとの見方を示し、「協会を挙げて人手不足の解決に知恵を絞りたい」と話した。