石川県準絶滅危惧種のササユリ盗掘ネット販売か 店で扱わず、高い希少価値

ササユリが球根ごと掘り返された跡=七尾市和倉町の和みの丘公園

  ●七尾、金沢、珠洲で被害

 石川県の準絶滅危惧種「ササユリ」の盗掘被害が今月、相次いでいることが23日までに分かった。七尾、金沢市では球根ごと持ち去られ、珠洲市では無断で刈り取られた。美しい花は愛好者の間で人気があるが、扱う生花店は少ない。このため近年、ネット上での取引が散見され、販売目的で盗んだ可能性が高いと専門家は指摘する。全国的に多発するササユリ盗難に、保護団体は「違法行為であり、絶対にやめてほしい」と強く訴えている。

 七尾市和倉町の「和みの丘公園」では、少なくとも10株が球根ごと持ち去られた。金沢市の「医王の里」でも5、6株の球根の盗掘が確認された。珠洲市では宝立町柏原の山林で毎年のように無断で刈り取られ、所有者が頭を悩ませている。

 同様の被害は全国的に相次ぐ。北海道の函館山では盗掘や切り取りが年々増加し、地元団体は今月、登山客にチラシで注意を呼び掛けた。新潟県上越市の五智公園では過去に100カ所以上で被害が見つかった。

 保護団体「日本ササユリ会」によると、ササユリは種を植えてから花を咲かせるまでに10年かかることもあり、栽培が難しい。販売する店もほとんどないため希少性が高いという。

 一方、ネット上ではフリーマーケットアプリなどで個人間で容易に取引でき、通販サイトでは売り切れが続出する人気の商品となっている。同会は「匿名性の高いネットで取引できるようになったことが、ササユリ盗掘が多発する要因」と指摘する。

 同会などによると、ササユリの盗掘は窃盗や器物損壊、不法侵入などに当たる可能性のある違法行為であるという。

 七尾市の和みの丘公園では5年前にも約50株の花が切り取られる被害があった。管理する住民団体「蓮(れん)の会」が看板で注意を促しており、会員の中西貞夫さん(76)は「地道に注意喚起していくしかない」と話した。

 ★ササユリ 日本特産のユリ科の球根植物。葉や茎の形がササに似ていることから名付けられ、地域によってはヤマユリと呼ぶ。初めて花を咲かせるまでに平均で7年以上かかるとされ、5~7月に淡いピンク色の花を咲かせる。

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