ラッセル、ブランケット不要のF1タイヤに懸念。ピレリはアウトラップのやり方を変える必要性を認めるも安全上の問題は否定

 メルセデスのジョージ・ラッセルは、F1はブランケットレスタイヤの準備ができておらず、ドライバーにとって潜在的な安全上の問題があると主張しているが、ピレリは反論している。

 F1関係者は、持続可能性への取り組みの一環として、電気タイヤウォーマーを禁止する計画を進めるか否かについて7月末に投票を行う。ピレリはブランケットレスタイヤを開発しており、ラッセルとメルセデスは先週バルセロナでフェラーリのドライバーたちとともにテストを行った。

 タイヤのテストを担当したドライバーたちからは何の批判も出なかったが、それでもラッセルは、バルセロナの高い気温とコースの特殊な形状が、プロトタイプタイヤのパフォーマンスを上げた可能性があると主張した。

「本当に正直に言うと、F1はこうしたタイヤをレースの計画に持ち込む状況にはまだないと思う」とラッセルはコメントした。

「ピットストップ中にピットレーンにいるメカニック全員のことがとても心配だし、寒いコンディションでのレースのアウトラップについても大きな懸念を抱いている」

「クラッシュが起こるだろうと確信している。これらのタイヤには多くの作業、費用、開発が費やされていると思うが、他のことに力を注ぐこともできると感じている」

ピレリのエンジニアと話すジョージ・ラッセル(メルセデス)
2024年用ピレリF1テスト(バルセロナ) シャルル・ルクレール(フェラーリ)

 ピレリのチーフエンジニアを務めるシモーネ・ベラは、低温のコースコンディションでブランケットレスタイヤに切り替えることはより難しいと認めたが、アウトラップで異なるアプローチを取ること、また、高いレベルの注意が必要になるだけだと主張した。

「ドライバーは、ブランケットを使わなくなったら、現在とは違う状況になることを考える必要がある」とベラは語った。

「だから彼らはアウトラップについて異なるアプローチを取らなければならない。寒いコンディションでは、当然ながらタイヤ温度を上げるのがより難しくなるかもしれない。それはラップの最初の部分、つまり最初のセクターだけの問題だと思う」

「一般的に他のセクターと比較してはるかに多くの違いが見られる。セクター2と3のラップタイムは、ブランケットを使用した場合とすでに一致している。つまり、最初の数コーナーを慎重に進んでいくことが重要なのは明らかだ」

 ベラははまた、ブランケットレスタイヤに安全上の問題があることを否定した。

「安全性に関しては、私が見たデータから特定のリスクは見当たらなかった」

「確かにファーストラップでのドライビングの仕方を変える必要はある。タイヤを保護するためにもドライビングスタイルを調整しなければならない。なぜならタイヤ温度が上がらない最初の数コーナーでプッシュしすぎると、グレイニングが発生する可能性があるからだ」

「そのため、ドライバーの意見はもちろん尊重するが、古いタイヤとそのタイヤマネジメントと比較すると、当然だが違いはあると思う」

バルセロナでピレリの2024年用タイヤのテストを行ったミック・シューマッハー(メルセデス リザーブドライバー)

 興味深いことに、ラッセルの発言があった直後、レーシングドライバーのマルコ・アンドレッティはラッセルの反応は“非現実的”だと指摘した。インディカーではタイヤウォーマーを使用していないからだ。

「非現実的だ。冷えたタイヤは、実力のある者とそうでない者をはっきりさせる。また、ピットストップの変化を見るのはエキサイティングなことだろう」とアンドレッティはツイートした。

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