兵庫・尼崎の福祉事業所、虐待事案で行政指導 市は9カ月調査行わず

尼崎市役所=尼崎市東七松町1

 兵庫県尼崎市の福祉事業所で2022年3月、利用生徒の体にひもを巻き付ける事案があり、同市は虐待と認定し、23年2月、事業所に行政指導を行った。市の担当部署は緊急性がないと判断し、約9カ月間、現地での調査を行っていなかった。市川忍福祉局長は22日の市議会健康福祉常任委員会で「行政への不信を招いたことを深く反省する」と述べ、虐待を疑う通報があった場合は局内で情報共有する方針を示した。

 22年4月に市の担当課が事案を把握した。担当課は、生徒が引き続き通所しており、すぐに安全を確保しなければならない事案ではないと判断。通報者を守る観点からも積極的な調査を控えたとしたが、同10月、通報者が市に問い合わせたことなどで幹部に事案が伝わり、同12月に法人指導課が聞き取り調査を始めた。

 市によると、事業所側も生徒側も遊びの一環だったとしており、生徒も保護者も虐待の認識はなかったとするが、体を拘束していること自体が虐待に当たると判断。行政指導と併せて事業所に改善計画を出させ、定期的にチェックする。

 市は委員会で、初動の判断や調査の遅れ、局で状況を把握できていなかったことを陳謝。今回の対応を受けて、虐待が疑われる全ての事案を局幹部に報告するよう変更した。定期的に検討会議を開いて情報を共有し、方針を決める。(中川 恵)

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