中国発着のクルーズ船、別府国際観光港に3年10カ月ぶり寄港【大分県】

別府国際観光港に入港した「ザオ・シャン・イ・ドン」=23日、別府市
下船した乗客は、バスに分乗して地獄めぐりに出かけた
地獄めぐりを楽しんだ中国人観光客=別府市の血の池地獄

 別府市の別府国際観光港に23日、中国発着のクルーズ船が約3年10カ月ぶりに寄港した。新型コロナウイルス禍で中国政府が規制していた海外旅行が一部解禁され、本年度は10隻以上の寄港が見込まれている。欧米やアジアからのインバウンド(訪日客)が復調する中、中国からの客足は依然として鈍い。関係者は「クルーズ船が本格回復すれば県観光に弾みがつくのでは」と期待する。

 クルーズ船「ザオ・シャン・イ・ドン」(4万8千トン)は19日に中国・上海を出港後、12泊13日の日程で日本国内各地を回る。別府港には23日朝に着岸し、入国審査を終えた乗客650人が続々と大型バスに乗り込んで観光に向かった。

 血の池地獄(同市野田)では、写真撮影や足湯を楽しんだ。母親と訪れた上海市の王竿(ワンチェン)さん(30)は「見たことのない景色。また別府を訪れたい」と喜んだ。同船は昼過ぎ、大阪港に向けて出航した。

 別府港には本年度、国内外のクルーズ船44隻が入港予定。過去10年間の最多を更新する見込みで、このうち13隻が中国発着のクルーズ船という。官民でつくる県国際観光船誘致促進協議会(事務局・別府市)は「中国人観光客は起爆剤となり得る。社会情勢を注視しながら、中国国内での情報発信に力を入れる」と期待する。 

 コロナ禍前の2019年に中国から県内を訪れた宿泊客は約8万3千人だった。国・地域別で韓国(34万4千人)、台湾(14万人)、香港(8万9千人)に続いて多く、観光消費増には欠かせない存在といえる。

 ただ、中国政府が厳格な新型コロナ封じ込め政策をとったこともあり、客足は戻っていない。県の観光統計調査(速報値)によると、今年5月の中国からの宿泊客は1829人。19年5月(5650人)の約3割にとどまる。

 訪日中国人向けの旅行商品を手がける中和国際(大分市錦町)の先山武士取締役(48)は「本格回復はこれから。消費を促すには大分での滞在時間の過ごし方が鍵になる。魅力あるツアーづくりを考えたい」と話した。

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