部活に行くと自宅出た後に…南浦和中1自殺、顧問に「不適切な指導」も「指導死」は否定 第三者委が会見

記者会見の冒頭、黙とうする第三者委員会の委員4人=23日午後、さいたま市内

 埼玉県さいたま市立南浦和中学校1年の男子生徒が2018年に自殺した問題で、市教育委員会の設置した第三者委員会は23日、記者会見を開き、調査報告書を公表した。部活の男性顧問が別の生徒に不適切な指導をしていたことや学校の対応が「遺族の心情に寄り添うものではなかった」と指摘。一方で、顧問の指導と死亡の因果関係はないと認定し、裏付ける証拠が不十分として「指導死」と判定できないとして、事実上否定した。

 死亡したのは当時13歳の怜さん。怜さんは18年8月26日、バドミントン部の部活動に行くと自宅を出た後に自殺した。遺族によると、前日に顧問から「部活さぼって、ゲームセンターにいたことを個別に呼んで指導します」と電話があった。調査報告書は関係証拠を総合的に考慮すると、「個別に呼んで指導する」との発言は考えにくいとした。

 顧問は当時の2年生に対して、「頭が悪い」などと発言しており、不適切な指導と認定。顧問の電話が自殺に傾倒する大きな契機となったと考えられると指摘したが、自殺の要因については、中学校入学の間もない時期、部活動への適応、顧問による指導など複数の要因があったとして、「指導死」と認めなかった。いじめは確認されなかった。

 学校側は自殺当日に事実を公表するかの判断を両親に求め、校長は報道陣に取り囲まれるなどと発言し、「不慮の事故」とするよう提案があった。調査報告書は「遺族の心情に真に寄り添うものではなかったと言わざるを得ない」と指摘して改善が求めた。

 怜さんの自殺を巡り、遺族は顧問の指導が原因として、第三者による調査を要請。第三者委が19年7月に設置された。調査会は計74回開催され、22年7月に調査報告書をまとめた。遺族と調査結果や公表内容について協議を進め、約1年後の発表となった。

 第三者委の岡田弘座長は病気を理由に欠席し、副座長ら委員4人が報告書の内容を説明した。

■再発防止に全力、顧問を処分せず/さいたま市教委

 さいたま市教育委員会の細田真由美教育長は記者会見を開き、「怜さんに対して、心からご冥福をお祈りします。命を救えなかったことに、心から謝罪します」と述べ、再発防止に全力で取り組む意向を示した。顧問教諭への処分を行わないと説明した。

 顧問教諭は、調査報告書で当時の2年生に対する指導が不適切と認定されたが、校長らの指導で改善されたと判断された。細田教育長は「処分に該当するとは考えられないと結論に至った」と説明。

 顧問に対しては「一つの要素になった行動をしてしまった。重い事実を受け止めてもらいたい」。校長に対しては、遺族に複数の不適切な対応があったとして当時、指導を繰り返したという。「なぜ気持ちに寄り添う行動ができなかったのか残念」と述べた。

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