カネミ油症次世代調査 「口唇口蓋裂」の発生 次世代で高い傾向 研究班「因果関係言及難しい」

カネミ油症次世代調査の報告があった全国油症治療研究班の会合=福岡市内

 長崎県などで広がったカネミ油症の被害者の子や孫ら次世代への健康影響調査を進めている全国油症治療研究班(事務局・九州大、辻学班長)は23日、先天性疾患の一つ「口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)」の発生率が次世代で高い傾向にあると報告。ただし「この結果だけで油症との因果関係に言及することは難しい」とした。油症の主因ダイオキシン類の親の血中濃度と次世代の自覚症状との比較では、現時点で統計学的な差は出ていないという。引き続き客観的な情報を集め、解析を進める。
 福岡市内で開いた被害者団体との会合で報告。ダイオキシン類は汚染油を摂取した母親の胎盤や母乳を通じ、子や孫に移行した可能性があるが、これまで公的な実態把握はされてこなかった。調査は国が費用を拠出し、研究班が認定患者の子や孫を対象に2021年度から進めてきた。
 報告によると先天性疾患について、動物実験でダイオキシン類の影響が報告されている口唇口蓋裂と心室中隔欠損症に着目。口唇口蓋裂は次世代と一般人口との発生率を比較し、統計学的に次世代が高かった。心室中隔欠損症は明確な傾向がなかった。
 次世代油症被害の解明にはまだ至っていないことから、被害者側からは落胆の声が聞かれた。辻班長は「統計学的には解析可能なデータが手に入っている。次世代の健康状況をより明確に判断するため調査を進める」と話した。次世代の血中濃度の数値などを加味した解析結果は来年2月に報告する予定。

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