LMP2廃止にともないWECを去るユナイテッドAS。ハイパーカーでの復帰は「諦めていない」とオーナー

 LMP2レーシングチームの“強豪”ユナイテッド・オートスポーツは、来季2024年にWEC世界耐久選手権から離脱するものの、将来的なトッププロトタイプクラスへの参戦を「諦めていない」とチーム共同オーナーのリチャード・ディーンは語った。

 イギリスとアメリカの合同チームは、WECが今季限りでLMP2カテゴリーを廃止するため、プログラムの主戦場を北米のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の同カテゴリーに移す予定だ。

 しかし、これによってWECのハイパーカークラスや同じくIMSAの最高峰カテゴリーであるGTPクラスにコミットする可能性がなくなったわけではなく、チームはこれらのカテゴリーへの新規参入を検討しているメーカーと話し合いを続けていることが理解されている。

「我々はペダルから足を離していない」と、ディーンはSportscar365に語った。

「(未来への)ドアを開くには、そのドアをノックして誰かが応対し、会話をしなければならない」

「かなり近づいたと思うし、(今年は残念ながら)チャンスは消えてしまったが、それでもかなり楽観的に見ている」

「もしそれが私の決断なら、今ごろはハイパーカーを走らせていただろう。だから私の決断ではないが、我々はまだ強く推し進めており状況は非常に楽観的だと考えている」

「それは単に押し戻されているタイミングなだけだ。WECチームのモチベーションを関連シリーズやIMSAのような注目度の高いシリーズで維持することで、ユナイテッド・オートスポーツはそのチャンスが来たときにすぐに出発できるようになる」

■カスタマーカーを走らせる可能性もある

 以前、ユナイテッド・オートスポーツはファクトリープログラムにしか興味を示さないとしていたが、ディーンは状況次第ではカスタマーカーの可能性もあると認めた。

 しかし彼は、プライベーターによるトップクラス・プログラムの真のコストを評価することについては様子見のアプローチを取っていると述べた。

「プライベーターカーについての話し合いにオープンでないとは断言しないが、我々は(ファクトリープログラムを実現させるために)メーカーと話し合いをしてきた。だから、どのようなかたちであれ、そのような予算を組んでいない」と説明したディーン。

「私は今のところ、それを諦めたくない。(ハーツ・チーム・)JOTAとプロトン(・コンペティション)がカスタマーチームとして成功するかどうかを興味深く見守っている」

「プライベーターがどのようにハイパーカー統合されるのか、グリッドサイズとGTグリッドにどのような意味があるか、どれだけ多くのプライベーターが参加できるのか、そして予算はどうなっているのか。カスタマーチームがハイパーカーを運営するのに本当に掛かる費用を把握する前に、それらを他の人たちに見つけてもらうことは良いことだ」

ル・マンの“前哨戦”第3戦スパからWECに出場しているハーツ・チーム・JOTAの38号車ポルシェ963 2023年WEC第4戦ル・マン24時間レース

■一時はLMGT3への転向も検討

 ディーンは、来年もWECに残るために当初はLMGT3プログラムを検討していたが、最終的にはハイパーカー以外のメーカーでエントリーを獲得できるかどうかが不透明なため、除外したことを認めた。

 現行のLMGTEアマクラスと置き換えられるLMGT3クラスは、1メーカーにつき2台のエントリーに限定される。さらに、エントリーはハイパーカークラスに参加しているメーカーやブランドに優先権があることが確認されている。

 彼は「何らかのプログラムにコミットする場合、ある程度の確実性が必要だ」と述べた。

「予算を組み立て、ドライバーと契約し、スタッフやクルマ、キット、機材にコミットするのであれば確実にグリッドにつきたいものだ」

「WECの2024年のグリッドを見ると、どこに空きスペースがあるのかがよくわからない。LMP2が廃止されたとしてもハイパーカーの成功や、GTメーカーの残り(参入可能枠)を見ると(確実に入れると言えるほど)充分なスペースは生まれていない」

「グリッドに並ぶと思っているGTチームやメーカーの中には、失望するかもしれないチームがいくつかあることを私たちは予想できる」

「我々が有名なLMP2チームだとしても、特定のGTメーカーに自分たちの旗を掲げたところでエントリーが保証されると言うのは難しいんだ」

2024年シーズンはIMSAのLMP2クラスにフル参戦することを明らかにしているユナイテッド・オートスポーツ

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