【部活どうなる(4)地域の課題】選べる生徒、選べぬ生徒…地域差や経済力が左右 多岐に渡る問題、懸念も

部活動地域移行を巡り、昨年12月に修正されたガイドラインのイメージ図。下段に外部人材が部活動を指導する案が加えられた(スポーツ庁「参考資料」より)

 埼玉県戸田市や白岡市、さいたま市ではこれまでの部活動の地域移行の取り組みを踏まえ、議論が行われてきた。

 昨年末、白岡市で開かれたシンポジウムで、学習院大元教授で日本教育実践研究所の長沼豊所長は部活動の地域移行に触れて、(1)過熱化した部活動を変える(2)少子化の影響を最小限に抑える(3)教員の働き方改革を進める―を挙げた。

 特に長沼所長は少子化の問題を強調する。全国で将来、中学生世代が減少する見込みの中、学校や生徒が減り、部活動そのものの維持が難しいことを指摘。「子ども目線で、持続可能な部活動について考えなければいけない。教育委員会、学校が頑張ってもうまく行かない。社会教育が前面に出て、まちづくりとして受け止める自治体がうまくいく」と訴えた。

 「やりたい部活がない」。県内では生徒数の少ない郊外の小規模校で部活動が減少し、集団競技では複数の学校が合同チームで大会に参加する例が後を絶たない。逆に都市部の大規模校では部活が選べる。民間のクラブも選択肢に上がるが、会費や送迎など親の負担が増えることが壁になる。地域差、親の働き方や経済力が部活や課外活動への参加を左右するのだ。

 部活動の地域移行はこうした課題が共有されずに進められ、さらに国の急な方針転換が教育委員会や学校の戸惑いを広げた。文科省は昨年末、2023年から3年としてきた移行の目標期限を撤廃。ガイドラインでは「部活動を地域に移行することが困難な場合、外部の指導員を活用することが可能」と変更した。スポーツ庁は「地域移行のスタンスは変わらない。3年間で達成するというところが独り歩きした」と答える。

 部活動の地域移行が本年度から本格的に始まったが、問題は多岐にわたり、複雑に絡まっている。教員からの視点が配慮されていないことを懸念する、ある校長は胸の内を明かす。「私も部活で子どもの出産に立ち会えなかったが、生徒のためと思っていた。しかし管理する立場になり、教員のただ働きの上に成り立っている部活が今のままではいけないと思うようになった。(今の状況は)不安が募るばかりだ」

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