兵庫県姫路市の市蝶(しちょう)、ジャコウアゲハが、市内各地で羽化を始めた。6月は1年のうちで最も動きが活発になる時期。同市香寺町では地元男性2人が、ジャコウアゲハの幼虫が好むウマノスズクサの育成に奮闘中で、「周辺を蝶が舞う地域にしたい」と意気込んでいる。(辰巳直之)
香寺町を流れる恒屋川の土手。梅雨の晴れ間、黒い羽が特徴のジャコウアゲハが木陰で休んでいた。
「以前はちらほら見かける程度だったが、今は多い時で30匹ほどが飛んでいる」。同町の鎌谷利晴さん(73)はそう言って、ジャコウアゲハに温かなまなざしを向けた。
4年前、鎌谷さんは自宅近くの土手で、幼虫が付いた草を見つけた。調べてみると、ジャコウアゲハとウマノスズクサだった。
ウマノスズクサはツル植物で、県の2020年版レッドデータブックでCランク(準絶滅危惧種相当)に指定されている希少種。鎌谷さんは、ジャコウアゲハを広く知ってもらうためにもウマノスズクサを育成しようと、友人の渡辺敏信さん(72)とともに保全活動をスタートさせた。
同町土師地区の土手周辺では、年に数回草刈りを行う。このため、鎌谷さんはウマノスズクサが刈り取られることのないよう、自生する一角をビニールテープで囲った。さらにジャコウアゲハのさなぎが冬眠した秋以降は、適度に草刈りをして日差しが入りやすいようにした。その結果、周辺で見られるさなぎの数が徐々に増えていったという。
近くには、ジャコウアゲハとウマノスズクサについての解説パネルも設置。今後、取り組みの協力者を増やし、観察会も企画したいとしている。
鎌谷さんは「今の環境をしっかり守っていく。貴重な自然が身近にあることを地元の人たちに知ってもらいたい」と話した。
姫路市立手柄山温室植物園の松本修二研究員は「ウマノスズクサが自生する場所は限られている。活動を継続していってほしい」と期待を込めた。