鎌倉「天空のカフェ」再び閉店へ GWから物販で再出発もクオリティー重視で決断 背景に行政の規制が…

6月末で再び閉店する樹ガーデン=6月上旬、鎌倉市常盤(樹ガーデン提供)

 「天空のカフェ」とも呼ばれ、市民や観光客から長年愛された鎌倉市常盤のカフェ「樹(いつき)ガーデン」が今月末をもって再び幕を閉じる。カフェは都市計画法に抵触していると市の是正勧告を受けたこともあり、昨年末に閉店。大型連休(GW)から軒下を使い物販で再出発したものの、今回も折り合いが付かなかった。オーナーの石川照樹さん(68)は「クオリティーを保ちながら営業するには限界だと考えた」と話している。 

 樹ガーデンは、北鎌倉と鎌倉大仏殿高徳院を結ぶハイキングコース上に立地。1980年から県の保健所の許可を得た上で、飲食物を提供してきた。コロナ禍前は年間6万人もの人が訪れていた。だが、2019年に市民からの情報提供で、調理をする建物が市街化調整区域内の専用住宅に該当するため、飲食営業の調理設備を使用できないことが判明し、市が是正勧告に乗り出していた。

 昨年11月21日にホームページで閉店を告知したところ、1カ月で来客が7千人を超えた。石川さんは「一民間企業の社会貢献のレベルを超えているのかもしれない。閉店してはならない」との思いが募った。

 年が明け、建物の外の物販であれば可能との見解もあり、GWから店を再開した。全国からえりすぐりの飲み物を集めたほか、オーガニック素材のパウンドケーキなどを調達。これまで好評だった「スペシャルカレー」は都内で早朝から仕込み、毎朝鎌倉まで届けた。だが、軒下での物販はできないとの話が浮上。テントを張って販売する案もあったが、「クオリティーを維持しながら運営したい」と再び閉店を決断した。

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