3年生、夏物語2023 ハンドボール男子 敗戦した大分、後輩に託した「それ以上」 【大分県】

負けることなんて考えていなかった。ハンドボール男子の県高校総体決勝で、大分は大分雄城台に敗れ、全国高校総体(インターハイ)への連続出場の道を絶たれた。敗戦の2週間後に3年生の最後の大会となる九州高校体育大会に出場。藤家圭二コーチは、当時をこう語る。「この2年間は県内無敗だっただけに、インターハイに出られないという現実を選手は受け止められず、ショックは大きかった。確かに雄城台のディフェンス力は高かった。身長もあるしキーパーも良かった。応援もすごかった。だが勝たなければいけなかった。敗因を挙げるなら、うちの準備不足だった」

時間の猶予がない中で、九州大会に向けて準備を整えた。しかし、選手たちのモチベーションが上がらず、試合の意義を見いだせない。気持ちを整理できない選手が多い中、幡東佑成(3年)は、「負けた次の日から気持ちを切り替えた。へこんでいても仕方がない。インターハイには出られないので、九州大会でいつも以上の力を出し切ることを考えた。どうやったら点が取れるのか、どんなディフェンスをしたらいいのか。考えて実践することが後輩のストックになる」とプレーで後輩に伝えたいことを表現しようと考えた。

気持ちを切り替えて最後の舞台に臨んだ幡東佑成

九州大会では、1回戦で博多(福岡)に真っ向勝負を挑み、快勝。2回戦は準優勝した国分(鹿児島)と対戦、前半のリードを守りきれず惜敗した。思うような結果は残せなかったが、3年生を中心に持ち味の速攻から得点を重ねた。藤家コーチは「3年生には悔しさを残させてしまった。申し訳ない。全ては準備不足だった。彼らのこれからの人生で、この経験を生かしてもらいたい」と、ねぎらいの言葉を掛けた。

キャプテンの阿南仁(3年)は、「前半は勝っていたのに、後半は相手のディフェンスに対応ができないまま終わった。最後の最後に勝ち切れるチームとの差を感じた。全てを出し切れなかったけど、気持ちの部分では全部やり切った」と涙を浮かべた。そして、後輩には「今できることは今すること。チームとしての練習も個人のトレーニングも今以上のことをしなければ勝てない」と伝えた。

決して練習を怠ったわけではない。他校に負けない練習を積み重ねてきた。だが常に「それ以上」を自分に課すことが、揺るぎない結果をもたらすと知った。敗戦から学んだ言葉は、後輩に強く深く刻まれた。

後輩に思いを託した阿南仁

(阿部美里)

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