反発を招いた湘南ベルマーレの新スタジアム構想…ポイントとなりそうな「平塚市の民有地」はどこ?

湘南ベルマーレの新スタジアム構想を巡る状況が混とんとしつつある。

クラブはホームタウンの一つでホームスタジアム、練習場、クラブハウスのある平塚市に対し、昨年秋にレモンガススタジアム平塚の隣に新スタジアムを建設する構想を提示。「より現実性の高いものをもう一度考えてくださいと、再提案をお願いしている状況です」(落合克宏平塚市長)という市側の回答を受け、クラブは今年5月に市へ再提案を行った。

その内容は、前回の提案と同じく平塚市総合公園内に新スタジアムを建てるか、あるいは近くの民有地に建設するかの2案だった。また、総事業費として見積もった142億円のうち、半額近い70億円の負担を市に求めるとした。

これに対し、平塚市は反発とも言える反応を見せている。神奈川テレビ(tvk)の『News Link』が特集を組んで伝えている。

番組内では、5月30日に行われた落合克宏平塚市長の記者会見の様子も紹介された。

「今回は、かなり無理な提案を一方的に突き付けられたものという感じを受けています。

ベルマーレが平塚にあるということは市民の誇りだと思っています。ですから、これまで繰り返し申し上げておりますけれども、民間が主体となって、平塚市内で、それも総合公園以外に専用スタジアムを作るのであれば、市としてできる限りの支援をしていきたいという私の気持ちに変わりはありません。」

また、市議会で「新設ではなく、レモンガススタジアムの改修という話になったらどうするか」と尋ねられた落合市長は、「今提案されている計画の課題を指摘して、その先の話になる。それで『平塚はNO』と突き付けられては筋が違う」と答弁。まずは湘南ベルマーレ側の判断が必要だという考えを示したという。

今回の発表では、市に対して提示した「70億円の財政負担」が批判材料の一つとなっている、

ただ、この金額は現在のホームであるレモンガススタジアム平塚をJリーグ規定に則って改修した場合として市を中心に試算した額と同程度。スタジアムなどの“ハード”はいずれ必ず更新の時を迎えるため、一定の説得はあると言えるだろう。

※画像は株式会社湘南メディアスタジアムによる新スタジアムのイメージ図

問題はやはり建設場所。総合公園はすでに建ぺい率が都市公園法に定められた基準ギリギリとなっており、単純にスタジアムを新設しただけではこれを超えてしまう。そこで今回の提案では、隣接する民有地を市が買い取り公園に編入することを求めている。

その民有地がおそらくこちら。

総合公園の東側にある広大な土地。ここは、第一三共ケミカルファーマの平塚工場跡地だ。こちらを公園に編入するという提案だ。

しかし、製薬工場の跡地ということで土壌汚染の可能性があるため調査が必要であり、また当然のことながら土地の購入費用もかかる。場所としては、新スタジアムの建設地という意味でも興味深いが、なかなか簡単な話ではなさそうだ。

なお、建ぺい率に関しては、基準を緩和するという手段もある。

同じ神奈川県内にある横浜DeNAベイスターズの本拠地、横浜スタジアムは代表例の一つ。横浜市は数年前に市公園条例を改正し、横浜スタジアムのある横浜公園限定で建ぺい率を最大38%まで引き上げた(※条例では通常最大12%)。横浜スタジアムはスタンドを増築したものの、基準をギリギリ超えない約37%に収めている。

余談だが、横浜スタジアムは増築と言っても上記の12%→37%というほど大きな改修があったわけではない。

これは以前の算出方法が「地面に接した部分の面積」であり、国の承認を得た上での特例建ぺい率だったため、もともと“特別扱い”だったのである。条例の改正を受け、一般的な算出方法に見直され、現在の約37%という建ぺい率になった。

つまり、自治体にとって“本当に大事なもの”であれば基準緩和などで柔軟に対応することも可能なのだ。

【関連記事】この夏、Jリーグにやって来るかもしれない外国人選手たち(2023年/J1編)

湘南ベルマーレは、今年の夏までに再提案した計画を検討できるかどうか判断するよう、平塚市に求めている。おそらくこれ以上の再提案はないとみられており、その場合は「別の選択肢」を考える段階になっていきそうだ。動向を引き続き注視していきたい。

© 株式会社ファッションニュース通信社