令和を生きる田原俊彦「還暦すぎてもキレッキレ」だけじゃないそのスゴさ!  還暦を過ぎてもスゴいトシちゃん!

若き日と遜色ないステージ!しかし、トシちゃんがスゴいのはそこだけじゃない

「トシちゃんは還暦を過ぎてもスゴい」
「今でもダンスがキレキレでヤバい」

2020年以降の田原俊彦は、そのアンチエイジングな部分ばかりが話題になりがちである。確かに62歳という年齢を考えると、そのパフォーマンスは驚異的である。注目されるのは仕方ないことだろう。

しかし、ファンには “トシちゃんがスゴいのはそこだけじゃない” という思いがあるのではないだろうか。また、田原俊彦本人の発言をチェックしても、若き日と遜色ないステージを見せることが自身のスタンダードだと捉えているようである。つまり、そんなことはプロとして当たり前のことだと。

それを踏まえ、ここでは、現在進行系の田原俊彦について「還暦を過ぎてもスゴい」「キレキレでヤバい」以外のある特筆点をクローズアップすることにしたい。

「哀愁でいと」から43年、毎年シングルCDをリリース

ストリーミングサービスが浸透した今日、日本のJ-POP業界でシングルCDをリリースすることはどんどん難しくなっているようだ(演歌は別物)。ドームツアーを行う人気ミュージシャンであっても、近年はシングルを配信限定にしているケースが珍しくない。ミリオンセラーを連発していた某グループはコロナ禍初期にシングルCDのリリースを見送った。

そんな時代にあって、田原俊彦は年に1枚、シングルCDのリリースを途切れずに続けている。毎年6月には必ずニューシングルを出すのだ。

今年リリースされた「ダンディライオン」(6月21日発売)は、1980年6月にEPレコードで発売されたデビュー曲「哀愁でいと」から数えて通算79枚目のシングルとなる(デュエット曲、12インチシングル、DVDシングル含む)。今も音楽活動を行う80年代アイドルは他にもいるが、新しい曲をシングルとしてパッケージ化し、しかも毎年販売している例は田原俊彦以外に見当たらない。

80年代のアイドルファンのような楽しみ方が継続される

80年代、3ヶ月に1度リリースされるアイドルのシングルA面曲は、ファンにとって最重要アイテムであった。いち早く情報をキャッチしようと努め、ラジオでのオンエアやテレビでの歌唱を楽しみとしていた。レコードを購入し、何度も針を落としてメロディと曲を覚えた。そして、しばらくするとまた次の曲を待つ。これを繰り返していた。

今は年イチペースではあるものの、田原俊彦ファンは現在も当時と同じような感覚を味わっている。毎年ゴールデンウィーク前あたりから6月に発売となるシングルの情報公開を心待ちにする。

5月下旬に始まるデジタル配信で曲をダウンロードして何度も聴きまくる。また、SNSでファン同士が感想を言い合うという80年代にはなかった楽しみもある。

その上で6月下旬の発売日にはCDもしくはCD+DVD(ミュージックビデオ収録)を当然のごとくゲットする。配信は配信、CDはCDであり、やはり購入はマスト。ジャケットや歌詞カードなどを眺めながら曲を聴く時間にはまた違った喜びがあるからだ。

毎年、異なるコンセプトで勝負作がリリースされる

では、田原俊彦はどのようなシングルを出しているのだろうか? 2020年以降の4枚を振り返ってみたい。

2020年 「愛は愛で愛だ」(作詞:岩里祐穂、作曲:CHOCOLATE MIX、編曲:保本真吾)
コロナ禍1年目のシングルで、感染拡大の影響によりリリースが8月に延期となった。歌詞には「予測不能な物語へ」「生きて生きて生き抜いて」と、パンデミックを意識したようなフレーズも含まれる。世の中全体がネガティブにならざるを得なかった時期に、ひたすらポジティブに愛の大切さを歌った。

2021年 「HA-HA-HAPPY」(作詞:岩里祐穂、作曲:岩田秀総・永野大輔、編曲:船山基紀)
田原俊彦はこの年の2月に60歳の誕生日を迎えた。還暦記念盤ともいえるシングルは、タイトルどおりにハッピーのフルスロットルのような、ミディアムテンポのアイドルポップスとなった。歌詞には「あの世でもよろしく」と、“60歳のアイドル” としてのファンへのメッセージが込められていた。

2022年 「ロマンティストでいいじゃない」(作詞:松井五郎、作曲:青葉紘季・大山聖福、編曲:船山基紀)
田原俊彦には「ハッとして!Good」や「チャールストンにはまだ早い」などビッグバンドの演奏によるジャジーな楽曲群がある。この曲は、その流れにありながら、落ち着いたミディアムテンポであり、「だって二人 ちょっといいオトナ」という歌詞もある、ラグジュアリーな大人のラブソングに仕上がった。古きよき時代のミュージカル映画のなかのナンバーのようでもあり、間奏でのタップダンスも見せ場となった。

2023年「ダンディライオン」(作詞:真間稜、作曲:KTR、編曲:牧戸太郎)
62歳にして挑戦的なシングルを用意した。タイトルの意味は “タンポポ” ではなく “ダンディなライオン”。過去3年のシングルとは異なり、アップテンポで、女性ダンサー2名を従えてアクティブに踊りまくる。「ピンチはチャンス」「酸いも甘いも抱いた僕ら」と自らのキャリアをトレースするような歌詞はファンに刺さる部分だろう。

これらのA面楽曲は、いずれも田原俊彦が毎日のようにテレビに出ていたあの10年間にリリースされていてもおかしくない、ファンが求める “トシちゃんらしい曲” だ。しかし、作曲陣は “あの10年間” を知らない年代のミュージシャンばかりである。つまりは、2020年代の新曲として違和感のないメロディでもあるのだ。アレンジも含め、制作者側はその絶妙な加減を追求しているのだろう。

「還暦を過ぎてもスゴい」「キレキレでヤバい」というスタンダードを頑なに守っている田原俊彦

ライブで聴きたいのは昔のシングルA面曲であり、最近の曲には興味が薄い… というのは、“長年に渡り活動するミュージシャンのファンあるある” である。自分が若い頃の曲に思い入れが強くなるのは当然だ。

だが、田原俊彦の熱心なファンにはその傾向が薄い。「哀愁でいと」「ハッとして!Good」「抱きしめてTONIGHT」「ごめんよ涙」などかつての大ヒット曲と同じように、最近のシングルも心より楽しみにしている。強い思い入れを持っている。そして、それが成立するのは、田原俊彦が「還暦を過ぎてもスゴい」「キレキレでヤバい」というスタンダードを頑なに守っているからだろう。

このRe:minderというWebメディアのキャッチコピー「懐かしむより、超えていけ!」がリアルに実践されているのだ。

カタリベ: ミゾロギ・ダイスケ

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