トップチェッカーのポルシェ963に違反。BMW Mハイブリッド V8が初優勝を飾る/IMSAワトキンス・グレン6時間

 6月25日、アメリカ・ニューヨーク州のワトキンス・グレン・インターナショナルで、2023年IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第5戦『セーレン・6アワーズ・オブ・ザ・グレン』の6時間レースが行われ、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ6号車ポルシェ963を駆るニック・タンディ/マシュー・ジャミネ組が終盤の逆転でトップチェッカーを受けたが、レース後の車検でスキッドブロック違反が発覚し、2番目でチェッカーを受けたBMW Mチーム RLLの25号車BMW Mハイブリッド V8(コナー・デ・フィリッピ/ニック・イェロリー)に勝利が渡った。

※車検結果を受け、初出時からタイトルおよび原稿内容を改訂しています。

■序盤から躍動したポルシェ。1台はトラブルで後退

 第4戦ラグナ・セカに続くイベントとなったオールドコースでの一戦は、ミシュラン・エンデュランス・カップのタイトルもかかる長距離レース。GTP、LMP2、LMP3、GTDプロ、GTDと全5クラスが参加するこのイベントには、57台ものエントリーが集まった。耐久戦ということで、3人目のドライバーを登録して戦う陣営もある。

 24日に予定されていたGTP予選は雨のためキャンセルとなり、IMSAはチーム選手権のランキング順に決勝レースをスタートすることを決定。これにより、タンディ/ジャミネ組がポールポジションとなり、その横にはアクション・エクスプレス・レーシングの31号車キャデラックVシリーズ.R(ピポ・デラーニ/アレクサンダー・シムズ/ジャック・エイトケン)がつけることとなった。

 曇り空の下、ドライコンディションで迎えた決勝では、1周目から波乱が。24号車BMWを駆るアウグスト・ファーフスがターン1出口で姿勢を乱し、ガードレールへとクラッシュしたのだ。これで24号車はリタイア第1号となってしまう。

6月25日に行われたワトキンス・グレン6時間レースのスタートシーン

 さらに2時間目のはじめにはセバスチャン・ブルデーの01号車キャデラックV.シリーズR(キャデラック・レーシング)がBMWのフィリッピにヒットされ、2台ともにダメージを受けることとなった。

 レースは序盤から6号車ポルシェがリードし、チームメイトの7号車(マット・キャンベル/フェリペ・ナッセ)が続く展開で進んだが、7号車はハイブリッドシステムのトラブルで2時間近い修復を行ったため上位争いから脱落することに。

 ハーフウェイとなる3時間を迎えた時点では、そこまでひとつのスティントを短くしていた31号車キャデラックが首位に立ち、エンデュランス・カップにおける中間ポイントを加算する。

ハイブリッド関連のトラブルで上位争いから脱落した7号車ポルシェ963
アクション・エクスプレス・レーシングの31号車キャデラックVシリーズ.R

 その後、残り1時間を迎える前までに25号車BMWがトップへと浮上。6号車ポルシェが追いかける展開となる。両車は最終スティントを迎えるにあたり4輪をフレッシュタイヤへと交換したが、その際にあった10秒の差を帳消しにする追い上げをジャミネが見せていった。

 レース残り6分を切ったところで、テール・トゥ・ノーズ状態の2台の前にはトラフィックが。ここでの位置どりに成功したジャミネが鮮やかにフィリッピをパス、最終盤での劇的な逆転を見せた。

 その直後、ターナー・モータースポーツの95号車BMW M4 GT3が起こしたアクシデントによって残り4分を切ったところでフルコース・コーションが導入され、レースはそのまま終了することとなった。

 これにより、タンディ/ジャミネ組は第3戦ロングビーチ以来となる、今季2勝目をマークしたかと思われたが、レース後の車検においてスキッドブロックの厚みが基準に届かなかったことから、リザルト上で6号車はクラス最後尾へと回されることに。25号車が繰り上がりで優勝を手にし、これがBMW Mハイブリッド V8陣営にとっての初勝利ということになった。

繰り上がりで優勝を手にしたBMW Mチーム RLLのニック・イェロリー/コナー・デ・フィリッピ
メイヤー・シャンク・レーシングの60号車アキュラARX-06

 2位にはキャデラック31号車が入り、メイヤー・シャンク・レーシングの60号車アキュラARX-06が3位となった。また、カスタマー車両のポルシェ963でエントリーするJDCミラー・モータースポーツの5号車が4位に入っている。

 LMP2クラスでは、クラウドストライク・レーシングby APRの04号車オレカ07・ギブソン(ベン・ヘンリー/ノーラン・シーガル/ジョージ・カーツ)が、Eraモータースポーツの18号車を抑えてクラス優勝を飾った。

 LMP3クラスでは、ライリーの74号車リジェJS P320(ガー・ロビンソン/フェリペ・フラガ/ジョシュ・バードン)がワトキンス・グレンにおける無敗記録を伸ばしている。フラガは終盤、Jr IIIレーシング30号車と激しいバトルを演じ、両車ともにコースオフする場面も見られた。

クラウドストライク・レーシングby APRの04号車オレカ07・ギブソン
ライリーの74号車リジェJS P320

■GTDの両クラスをレクサスRC F GT3が制す

 GTカテゴリーでは、GTDクラスにエントリーするバッサー・サリバンの12号車レクサスRC F GT3(フランキー・モンテカルボ/アーロン・テリッツ/パーカー・トンプソン)が総合20位で優勝。

 総合21位でフィニッシュしたバッサー・サリバンのもう1台、14号車レクサスRC F GT3(ジャック・ホークスワース/ベン・バーニコート)がGTDプロクラスのウイナーとなった。以下、リシ・コンペティツィオーネの62号車フェラーリ296 GT3、コルベット・レーシングの3号車シボレー・コルベットC8.R GTDと続いている。

 フォルテ・レーシングby USレーストロニクスのランボルギーニ・ウラカンGT3 EVO2やアイアン・デイムスなど、タイヤ関連のペナルティを受けたチームが複数あったため、3時間目から12号車のレクサスRC F GT3がこのクラスの主導権を握っていた。

 次戦、第6戦はカナダ・オンタリオ州のボーマンビルに位置するカナディアンタイヤ・モスポート・パークにて、7月7〜9日に開催される。このレースでは、LMP2を除く4クラスのレースが行われる。アメリカ北東部からそのままモスポートへと遠征するチームのため、週明けの月曜・火曜日はワトキンス・グレンに留まってのメンテナンスが許されている。

GTDプロ、およびGTDクラスを制したバッサー・サリバンのレクサスRC F GT3
GTDプロクラスの2位に入ったリシ・コンペティツィオーネの62号車フェラーリ296 GT3

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