地域住民に親しまれてきた千葉市中央区の市民緑地「川戸の森」が、5月末に一部を残し閉鎖となった。地権者が相続を契機に不動産開発業者に売却したためで、地権者が異なる1割は存続する。利用者からは「急になくなるなんて」と驚きの声が上がり、自然保護団体の関係者は「森を守る仕組みが必要」と指摘している。
市民緑地は市と地権者が契約を結び、豊かな自然を市民に公開する制度。契約を結ぶと地権者は固定資産税や都市計画税が全額免除される。川戸の森は、2016年4月に市民緑地に指定された約1万4千平方メートルの雑木林。クヌギやコナラが生い茂り、メジロなどの野鳥も姿を見せる。
今後どのように森を守っていけばいいか話し合おうと5月29日、川戸の森で「森の環境を次世代につなぐ集い」が開かれた。自然環境の保護活動を行うNPO「地球守」(ちきゅうもり)の高田宏臣代表らが呼びかけ、近隣住民ら約60人が参加した。
イベントでは「手間がかかる森の管理を行っていた行政や土地を提供してくれた地権者に感謝したい」という意見が出たほか「市民緑地が市の土地ではないことを知らなかった。当たり前にあるものだと思っていた」と反省する人もいた。「市に早く知らせてほしかった。(告知は)張り紙だけだった」と不満の声も上がった。
娘が川戸の森近くの保育園に通うという千葉孝太さんは「保育園の遊具は日差しで熱くなるため森をよく利用していた。普段から親しんできた場所で、住宅地の近くに自然があるのは貴重なのに」と残念がる。
今回の廃止について同市の担当者は「他の制度も活用しながら市民に自然の場を提供していきたい」と話す。同市では過去に三つの市民緑地が廃止され、今回と同じように相続がきっかけになったケースもあるという。
高田さんは「過去の事例が生かせていない」と指摘。「他の16カ所の市民緑地を守るためにも、住民も負担しながら、行政と住民、場合によっては企業と一緒に森を守る仕組みづくりが必要」と提案した。