駅でトイレが使えない…!閉鎖で波紋  大網白里市のJR外房線・永田駅 市は譲渡受けず、再開求める市民 【地方発ワイド】

JR外房線の永田駅=6月、大網白里市

 JR千葉支社が外房線永田駅(大網白里市)の構内トイレを2月に閉鎖し、地域に波紋が広がっている。JRは閉鎖前に、公衆トイレ化するため市への譲渡を提案したが、市は財政負担の大きさなどを理由に提案を断り、閉鎖に至った。トイレが使えない状況が長期化し、市民は署名活動を行ったり、市議会が陳情を採択したりと再開を求める動きが広がっている。(東金支局・森大輔)

 永田駅は同市に二つある駅の一つ。市中心部の大網駅から南に約2.4キロで、改札口周辺にコンビニ店はない。JRによると、2021年度の永田駅乗客数は1日平均775人。

 市によればJR算出の同年度の駅トイレ利用者は1日平均10人未満。今年2月5日、トイレ閉鎖に踏み切ったJRは「列車内のトイレを使用してほしい」と呼びかけるが、京葉線直通の車内にトイレはなく問題との指摘も上がっている。

 ▽公衆化も合意できず

 市企画政策課やJRによると、21年8月にJRが「持続可能な鉄道ネットワークの維持」に向けた経費削減を理由に、市に同駅トイレ閉鎖か、トイレ譲渡を初めて打診。市はその際に閉鎖には反対した。

 JRは22年4月、駅利用者以外も使える公衆トイレに改修して市に譲渡すると市へ正式に提案した。譲渡後の維持管理費は市負担とし推計は年間約34万円。市が譲渡を断った場合、トイレを閉鎖するとした。

 市は維持管理費のほか、50年以上前に建設された古い和式トイレを更新する費用も発生すると試算。厳しい財政状況などにより、提案受け入れは困難と結論付けた。22年6月にJRの提案を断り、閉鎖方針が固まった。今年2月の閉鎖後も両者は再開に向けた協議を継続しているが、打開策は見いだせていない。

 駅でトイレが利用できない異例の状況に、市民らは「永田駅のトイレを存続させる会」を発足。事務局の新倉雅樹さん(60)は「駅にトイレがないのは考えられない」と憤る。約190人分の署名を集め、金坂昌典市長に再開の陳情書と一緒に提出する方針。

 通勤で同駅をほぼ毎日使う男性会社員(60)は「駅のトイレはたまに使っていた。あったほうが便利で、ないと不便だ」と話した。

 ▽市議会も再開要求

 市議会定例会でも同駅のトイレ閉鎖問題は議論になった。一般質問した市議は「地域住民にとって永田駅はすごく大切。トイレ利用者が1日10人未満との数字は少なすぎるのでは」と疑問を呈した。

 同市瑞穂地区の区長会長を務める市議も、市議会に再開を求めて陳情。20日の本会議で全会一致で採択された。陳情書では周辺住民から心配の声が挙がっているとし市に「JRに構内トイレの再開を働きかける」「トイレ再開のため必要な支援を行う」よう求めた。

 陳情採択を受け、金坂市長は「陳情を真摯(しんし)に受け止め、トイレの利用再開に向けJRに要望していく。市の必要な支援は今後JRと協議する中で検討したい」とコメント。市企画政策課は陳情を受け、JRに文書で改めてトイレ利用再開を求める考え。

入口が封鎖されたJR外房線の永田駅の旧トイレ=6月、大網白里市

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