平安貴族の食事とは?栄養が偏りがちであった?!【図解 源氏物語】

内大臣家の近況を聞く(常夏)

暑い夏の日、源氏は夕霧と六条院の東にある釣殿(つりどの)で涼んでいました。すると、内大臣家の若者たちが訪れて川魚や酒などを楽しみながら、最近、内大臣が探し当てた外腹の子である近江の君が、早口で教養に乏しいなどと話します。源氏は、「子だくさんの内大臣家が、数から漏れた者まで集めるのは強欲」と言い、夕霧に「お前もその落葉を拾ったら」などと言います。夕霧と雲居雁を引き離した内大臣への当てつけでした。

その日の夕方、源氏は玉鬘と琴を弾きながら語り合いました。玉鬘への恋心を抱く源氏ですが、そろそろ現実を考え、兵部卿宮か鬚黒の大将に玉鬘を託そうかと考えることもありました。玉鬘のほうは、源氏は言葉ではいろいろ言っても、「実は無体な真似はなさらないのだ」と思いはじめ、それほど厭わなくなってきました。内大臣は玉鬘の噂を聞き、源氏の実子だろうかと疑いはじめます。一方では近江の君に手を焼き、弘徽殿女御のもとに行儀見習いに預けました。

弟の琴の演奏に感動(篝火)

近江の君に対する内大臣の態度を知った玉鬘は、「実の娘を笑いものにする内大臣ではなく、源氏のもとにいてよかった」と、いまでは感じました。秋になり、篝火の明かりの中で、源氏は玉鬘に琴の手ほどきをし、二人は詠み交わします。ちょうど六条院の夏の町の東側の建物で、夕霧と柏木たちが管絃遊びに興じていたので、招いて演奏させました。事情を知らない柏木は、じつの姉妹とは知らず、美しい玉鬘を前に緊張しながら演奏します。一方、内大臣が和琴の名手と知っていた玉鬘は、父譲りの腕をもつ兄弟の演奏に感動するのでした。

釣殿・・・84ページ参照。
秋・・・旧暦なので、ここでは7月になったということ。
篝火・・・鉄製の籠の中で薪をたいて照明する火。

貴族の食事

貴族たちの食事は、正式には1日に二度、巳の刻(10時前後)と、申の刻(16時前後)に行われた。食品の種類は豊富だが新鮮なものは少なく、食物へのタブーもあり、栄養は偏りがちだった。

御膳の例

「類聚雑要抄 るいじゅざつようしょう」(1146年ごろ)に描かれた、ある日の饗宴で出された御膳の図(「尊座前」の部分)。米を蒸した強飯(こわいい)、干物にした魚介類、果物、餅菓子などが描かれている。好みに味つけできるよう、塩・酢・醤(ひしお)といった調味料も置かれている。

貴族専用の膳

木製漆器でつくられた膳(料理を載せて供する台)がよく使われていた。

高圷(たかつき)・・・1本脚のついた、皿を載せるための台、あるいは器。饗宴や儀式には必需。
台盤(だいばん)・・・皿を載せる台で、座卓形式の食卓。縁が広くなっていてここにも皿を置いた。
懸盤(かけばん)・・・皿を載せる一人用の正式な膳。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』高木 和子

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』
高木 和子 監修

平安時代に紫式部によって著された長編小説、日本古典文学の最高傑作といわれる『源氏物語』は、千年の時を超え、今でも読み継がれる大ベストセラー。光源氏、紫の上、桐壺、末摘花、薫の君、匂宮————古文の授業で興味を持った人も、慣れない古文と全54巻という大長編に途中挫折した人も多いはず。本書は、登場人物、巻ごとのあらすじ、ストーリーと名場面を中心に解説。平安時代当時の風俗や暮らし、衣装やアイテム、ものの考え方も紹介。また、理解を助けるための名シーンの原文と現代語訳も解説。『源氏物語』の魅力をまるごと図解した、初心者でもその内容と全体がすっきり楽しくわかる便利でお得な一冊!2024年NHK大河ドラマも作者・紫式部を描くことに決まり、話題、人気必至の名作を先取りして楽しめる。

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