社説:ザリガニとカメ 新ルールで責任ある飼養を

 家庭や学校で多く飼われているアメリカザリガニとアカミミガメ(ミドリガメ)を、条件付きの特定外来生物に指定する政令が今月1日に施行された。

 飼い主がこれらを野外に放すと法律違反になり、罰則・罰金の対象になる。管理の不備で勝手に野外に逃げ出した場合も、違法となることがある。新ルールをしっかり周知したい。

 環境省によると、国内でアメリカザリガニの悪影響を受けている絶滅危惧種はベッコウトンボやタガメなど29種。アカミミガメも在来種のニホンイシガメの生育環境を奪っているとみられ、イネやレンコンの食害の報告もある。

 琵琶湖では増加したアカミミガメが漁具にかかり、漁業の妨げになっている。京都市伏見区の淀城跡公園の堀に自生するハスも、食害を受けている。

 2005年の外来生物法の施行後、国はアライグマなど156種を特定外来生物に指定してきた。しかし、生態系の「二大脅威」とされるアメリカザリガニとアカミミガメは含まれていなかった。

 同法では、指定生物は輸入・販売だけでなく飼育も禁止(許可制)となる。指定すると、許可手続きの煩わしさから、飼い主たちが一斉に野外へ放す恐れがあった。

 今回、国は条件付き指定という新たな枠組みを設けることで、輸入・販売・野外放出は禁止する一方、家庭などでの飼育は認めるとした。現実的な判断といえるが、もっと早くこうした柔軟な対応ができなかったか疑問が残る。

 北米原産のアメリカザリガニとアカミミガメは、ともに繁殖力が強い。前者は戦前に養殖カエルの餌として、後者は1950年代からペットとして大量に輸入されて野生化し、各地に定着した。

 当初は生態系への影響が分からなかった面があるにせよ、遅くとも専門家らによる実態把握が進んだ2010年代に規制を始めていれば、安易な売り買いや野外放出の歯止めになったのではないか。

 今後は市民にも業者にも、より責任ある飼養管理が求められる。全国の家庭には540万匹のアメリカザリガニ(寿命4~5年)、160万匹のアカミミガメ(同20~30年)がいると推計されている。壊れにくく、十分な深さと上ぶたのある水槽で飼っているか、囲っている柵に隙間がないかなどを改めて点検したい。もし飼い続けられなくなったら、代わりに管理できる人や団体を探す必要がある。

 国と自治体は河川や湖沼での生息状況を詳しく調査し、適切に防除を進めねばならない。自然の生きもののバランス回復には長い年月がかかる。研究機関やNPO、地域団体とも協力し、官民連携で息の長い取り組みを求めたい。

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