2年ぶり13回目の全国高校総体出場となるハンドボール男子の大分雄城台。その主力選手として活躍する小野蒼羽に注目が集まっている。今年4月の高校日本代表の選考会で186cm、95kgの体格を生かしたパワフルなポストプレーが評価された。小野は「うれしかったが、まだまだこれからという思いの方が強い。これからもコンスタントに代表に選ばれるようにしたい」と慢心はない。
幼いころから習っていたスイミングを辞めて、小学6年でハンドボールを始めた。当時の身長は175cmで、すぐに頭角を現す。大きな体を駆使し、ゴールエリアライン際でボールを受けて、ゴールにねじ込む。「指導者やチームメートが褒めてくれる。それが何よりもうれしかった」(小野)。仲間のつないだパスを「ポストプレー」でゴールに届け、毎試合10点以上の得点を挙げる「メールマン(配達人)」としての期待は高まった。
中学でも成長を止めることなく、2年の時には県代表としてJOCジュニアオリンピックカップに出場するなど全国の舞台を経験した。卒業時には今とほぼ変わらぬ体型となり、ハンドボールだけでなく柔道やバスケットボール、ラグビーなどの関係者から高校入学の誘いが掛かるが、小野は「平井(徳尚)監督の指導を受けたい」と大分雄城台に入学した。中学とは比べ物にならない練習の量と質に驚くも、「得点を取ることだけでなく、守備のハードワークやチームとして自分に何ができるかを学んだ」という。
飛躍的な成長を遂げ、高校年代では誰にも当たり負けしない屈強のフィジカルを手にした。ただ、2年生で主力選手となってから、チームとしては結果が出ない苦しい時期もあった。「勝てないことで弱気になっていた」と本来のパワフルなプレーは影を潜めた。最終学年となり、「チームの大黒柱はお前だろ」と平井監督の叱咤(しった)を受けて、試合の流れが悪いときこそ自分が泥くさいプレーをして、誰よりも汗かき役になろうと決めた。試合中にほえるのは自分を奮い立たせ、チームを鼓舞するスイッチだ。まだまだ荒削りで、調子の波があり、メールマンと呼ぶには足りないが、「チームの勝利のために」との思いは誰よりも強い。平井監督は「ようやく土台が築けた段階だが、これから多くのことを経験し、日本を代表する選手になってほしい。そのポテンシャルはある」と太鼓判を押す。小野は、全国高校総体で「チームに勝利を届ける」と活躍を誓った。
(柚野真也)