市民と“鉄人”互いに感謝 五島で4年ぶり「バラモンキング」開催 声援とサポート、力走後押し

「アイアンマン 夢をありがとう!!」。横断幕(奥)を掲げ、バイクで走る選手に声援を送る山田三智子さん(左)=五島市岐宿町

  18日に長崎県五島市福江島一帯で開かれた五島長崎国際トライアスロン大会「バラモンキング」。新型コロナウイルスによる中止を経て4年ぶりに開催した大会では、市民が「4年分」の声援を送り、ボランティアとして支えた。参加を待ちかねていた“鉄人”たち、市民それぞれから感謝の思いが交錯した。
 大会には県内外の768人が出場。総距離200キロのAタイプ、124.4キロのBタイプに挑んだ。
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 午前7時、スイム会場の富江緑地公園(富江町)。小雨の中、Aタイプの選手535人が一斉に水しぶきを上げスタートした。
 応援する人たちの中に、手づくりのボードを掲げて見守る長崎市の北市宏二さん(80)、弘美さん(78)夫妻がいた。約10年前に弘美さんの故郷、富江に県外から移り住んで以来、毎年来場。ボードには「北海道の皆さん遠いところからありがとう」の文字と選手たちの名前。毎年遠方の選手を書き出している。今年3月に、夫婦で長崎市に引っ越したが、「血が騒ぐ」(弘美さん)と今回も応援に訪れた。手話サークルにも入っていた弘美さんは、聴覚障害のある選手もサポート。「無事にゴールしてほしい」と見守った。

スイムの選手を見守る北市弘美さん=五島市富江町

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 泳ぎ切った選手は福江島の起伏の激しいコースをバイクで駆け抜ける。岐宿町の国道。「頑張ってくださーい!」。沿道からひときわ大きな声援が聞こえる。五島市の衣料品店「ヒロシ商店」の代表、山田三智子さん(65)や長男和廣さん(27)らがいた。向かいの横断幕には「アイアンマン 夢をありがとう!!」とある。夫洋一さん(故人)が、前身大会が始まった約20年前から使っている横断幕だ。この時期は、大会数日前から来島する各地の選手たちが店に立ち寄り、にぎやかになる。今年も30人ほどと再会を喜んだ。「こちらが元気をもらっている」と三智子さん。4年ぶりの選手たちの勇姿に「うれしさ」を感じ、声をからした。
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 午後6時ごろ。レース後半のラン。疲労がピークに達した選手が必死に歩を進める。平蔵町では、パンダの着ぐるみの6人グループ「五島列島パンダ応援隊」が軽快な音楽をかけながら応援。「ありがとう」「来年もまた来ます」と応える選手たち。歩いていた選手が再び走り始めた。

選手の背中を押す五島列島パンダ応援隊のメンバー=五島市平蔵町

 ボランティアは、県立高4校の生徒を含め市民約3千人。奥浦町のエイドステーションでも、地元の人たちがドリンクや軽食を振る舞ったり、冷却スプレーをかけたりした。小田哲也さん(52)は「ナイスラン。あと少しですよ」と声をかけ続けた。
 大会は12回目。高齢化などでボランティアの確保が年々厳しくなる中で開かれ、4年ぶりに沸いた島。ゴールした選手たちは口々に感謝の言葉を語った。昨年、一昨年と出場を予定していた島原市の男性(42)は声を振り絞った。「応援が力になった。大会を開いてくれたことがありがたい」

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