「播磨の誇りとともに戦う」なでしこ1部ASハリマアルビオン。声援を送るサポーターの姿を追う

FIFA女子ワールドカップが来月20日にオーストラリア、ニュージーランドで開幕する。

華やかな世界の祭典が近づく中で、日本女子サッカーは大きく揺れている。

開催まで1カ月を切ったのにもかかわらず、日本での女子W杯の放送媒体が決まっていないからだ。

世界一に輝いた女子日本だが、同大会の放映権料の高騰に買い手はつかず、ブロードキャストが未定というのは物悲しい話だ。

2011年日本を大きく沸かしたなでしこジャパンの世界制覇—。

あれから10年以上のときを経てWEリーグ創設など、着実に発展の歩みを進めているように思える。

この目で女子サッカーの現状を改めて目に焼き付けたい。

そんな思いを抱いて兵庫県播磨地域をホームタウンとするなでしこリーグ1部ASハリマアルビオンを観に淡路島へと渡った。

播磨の誇りを胸に

6月18日淡路島・五色台運動公園「アスパ五色」は心地よい浜風が吹いていた。この日はリーグ戦第13節ホーム・静岡SSUボニータ戦が行われた。

以前から個人的に仲良くさせて頂いているASハリマサポーターの志方和司(しかた・かずし)さんが、会場に駆けつけていた。

チャントを積極的に歌うサポーターは5、6人と少ないながらも、和気あいあいと弾幕をフェンスに張っていた。

女子サッカーが地域にどう根付いているのか。熱心なサポーターに尋ねることが正解に近いと考えた。

播磨の誇りを胸に戦うサポーター和司さんから話を聞いた。

播磨をホームタウンとするASハリマ

――まずは和司さんがASハリマを応援し始めたきっかけを教えてください。

本格的な応援は2018年から始めました。

そのきっかけが、兵庫県のサッカーチームのグッズ販売会のチラシが新聞に入っていたんです。

(もともとヴィッセル神戸サポーターの和司さんは)興味を持って行ってみたら、そこでASハリマアルビオンの存在を知りました。

グッズ販売をされている三宅さんから「1度見に来てください」と言われて、初めて観戦に行ったのが2017年ですね。

その年は2、3回観に行く程度だったんですよ。

コールリーダーをされている方にヴィッセル神戸の試合会場でたまたま会って話すようになってから、本格的に応援するようになりました。

――チームの魅力を教えてください。

一つは地元のチームというのが一番大きいですね(和司さんは播磨地域出身)。

もともとヴィッセル神戸は応援していたんですけど、兵庫のチームとはいえ神戸なので、どこか別のところという感じがありました。

ASハリマは姫路中心に、播磨地域をホームタウンとしています。

より地元のチーム感が強いから、地元のサッカーチームを応援したい。

もう一つはチームの雰囲気ですね。

社長を中心にすごく一体感があるチームなので、その雰囲気に惹かれました。

Jリーグと違って結果にガツガツしてない。

サッカーを好きだと選手からよりダイレクトに伝わってきます。

仕事しながら練習を頑張っているところも含めてですね。応援したい理由はそのあたりですね。

現地に誰もいない状況をできるだけなくしたい

――将来的にASハリマはどんなチームになってほしいですか。

強くなってほしい思いは当然あるんですけど、地元に根差す形でいい意味で変わらずにいてほしいです。

地域のイベントにブースをまめに出展してほしいです。

社長含めてみんなサポーターのことをすごく大事にしてくれているので、すごくありがたいです。

播磨にあり続けてほしいです。

播磨の地域で有名になってほしい、播磨ならみんな知っている存在になってくれたらうれしいです。

――地域リーグやなでしこリーグはJリーグと違ってアクセス面が悪い試合会場が振り当てられることが比較的に多いです。遠征やホーム会場に行くのも大変だと思いますが、チームを応援する熱意やモチベーションを教えてください。

Jリーグだと(アウェーでは)多い、少ないあれど、誰もいないということはあり得ないと思うんですけど、なでしこリーグだとそういうことがある。

アウェー試合で中継を見ていても、人がいなくても選手はスタンドに向かってちゃんとあいさつをしている。

それを見ていたら現地に誰もいない状況を、できるだけなくしたい。

単純に現地に行って、伝わる形で応援したいというのが大きいですね。

とにかく1試合でも多く現地で応援したい

――サポーターとして苦労したことを教えてください。

選手の弾幕ですね。

実をいえば、サポーターが作った弾幕はそんなに多くないんですよ。

選手の家族や勤め先の人が作っている幕が多いので、なるべく預かっている幕を多く出したいんです。

(弾幕を張る)スペースや時間の問題で泣く泣く削らないといけない。

その割り切りに結構時間がかかりました。

――選手の家族や勤め先の方から弾幕を預かっていると思うと割り切るのはつらいですね。

やっぱりサポーターの人数も少ないので、幕を張るだけにゆっくり使える時間はあまりないんです。

時間も30分とか決められたりするので…。

特に1、2人で行けば4、5枚しか張れないことがあって心苦しいことがありますね。

――女子ワールドカップ開幕が近づいています。女子日本代表の活躍は国内女子サッカーの普及、活性化の原動力になると思います。彼女たちに期待されていることはありますか。

何より成績を残してほしいです。

公言している通り優勝を目指してほしいですし、(女子日本代表の活躍が)なでしこリーグを含めた女子サッカー全体の知名度アップにつながる。

兎に角一つでも上の順位に、一つでも多くニュースでも取り上げられるような成績を残してほしいです。

――今後サポーターとしてチームをどう支えていきたいですか。

とにかく1試合でも多く現地で応援したいです。

主に播磨地域で活動するASハリマアルビオンはサッカーを通じた地域貢献をしているように思えた。

土台は地域に根付くこと

この日の試合はサポーターのチャントが会場に響き渡るも、試合は0-2で敗戦した。

後半16分まで出場したMF中野里乃主将がコメントを寄せてくれた。

右が中野里乃主将

「女子サッカーがワールドカップで優勝してから少しずつですが、以前より女子サッカーへの関心度や認知度が高まりました。

そのきっかけが、まさにワールドカップだったと自分は思っています!

いまはWEリーグができて、少しずつ男子と同様に(女子サッカーも)プロとしても発展してきています。

なでしこリーグからも、もっと数多くのチームがプロ化していくことが今後の女子サッカーを盛り上げる1つの要素だと思います。

そのために、まずは土台でしっかり地域に根付いていくこと、沢山の人に女子サッカーを見てもらい応援される、そんなチームにならないといけないと思います。

地道ではありますが、まずは自分たちASハリマアルビオンを知ってもらうことが大事かなと思います!」

今回サポーターから話を聞く形でASハリマの地域に対する活動を知れた。

女子サッカーの知名度不足などが叫ばれる中で、地域の女子サッカークラブはゆっくりと歩みを進めている。

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女子ワールドカップで日本代表の躍進によって、女子サッカーへの関心がより高まることを期待したい。

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