<熊谷6人殺害>妻子3人を亡くした男性「男逃走時に注意喚起せず違法」と主張も再び棄却 高裁「義務ない」

熊谷6人殺害、遺族の請求再び棄却

 埼玉県熊谷市で2015年9月に男女6人が殺害された事件で、県警が当時、不審者の逃走などを周辺住民に知らせなかったために妻子3人を殺害されたとして、遺族の加藤裕希さん(50)が県に慰謝料などを求めた国家賠償請求訴訟の控訴審判決が27日、東京高裁であった。森英明裁判長は「県警に広報活動を行うべき法的な義務があったとは言えない」などとして、一審のさいたま地裁判決と同様に遺族側の訴えを退けた。

 判決などによると、ペルー国籍の男=強盗殺人罪などで無期懲役=は15年9月13日、任意同行された熊谷署から逃走し、同14~16日に加藤さんの妻美和子さん=当時(41)、長女美咲さん=同(10)、次女春花さん=同(7)=ら男女6人を殺害した。

 遺族側は、14日の最初の殺人事件で県警が男を参考人として指名手配したのに、周辺住民に知らせて注意喚起しなかったのは警察権の不行使であり違法などと主張。さいたま地裁は昨年4月、「県警に情報提供の義務があったと認められない」と訴えを棄却した。

 判決で森裁判長は、「14日の最初の殺人事件の捜査において(県警が)男に強い関心を有していたことは否定できない」とする一方で、「断片的な捜査情報をもって被疑者を特定の人物に絞るのは困難だった」と当時の状況を判断。「男が犯人であり、凶悪犯罪が繰り返されることを県警が具体的に認識していたとは言えず、情報提供や注意を呼びかける法的義務があったとは言えない」とした。

© 株式会社埼玉新聞社