長崎県内の被爆者ら 安保法訴訟で二審も敗訴 「一審よりも後退」 福岡高裁 憲法判断示さず

請求が棄却され「不当判決」の垂れ幕を掲げる弁護士ら=福岡高裁前

 集団的自衛権の行使を認めた安全保障法制は違憲で、平和に暮らす権利が侵害されたなどとして、長崎県内の被爆者らが国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁(森冨義明裁判長)は27日、戦争が起きる危険性について「予測の域を出ない」として訴えを退けた一審長崎地裁判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。憲法判断は示さなかった。原告側は上告する方針。
 全国22の裁判所に起こした集団訴訟の一つで、13例目の控訴審判決。敗訴が続いており、このうち9件が上告。本県の原告は被爆者や戦争体験者ら110人で、2016年、1人当たり10万円の賠償を国に求め提訴した。
 判決は、原告側が主張した平和的生存権の内容などを「不明確」と指摘。法整備によって、生命や身体の安全が侵害されたとは認められず、戦争に巻き込まれる不安や恐怖の念を抱いたとしても「法的利益の侵害があったということはできない」とした。
 原爆や戦争体験を訴えた原告らに対し「多大な精神的苦痛を感じたことが認められる」とした一審判決の文言を削除し、「実体験に基づく供述等は、それ自体傾聴に値する」との表現にとどめた。
 判決後、原告側は福岡市内で報告集会を開き、中村尚志弁護士は「一審判決よりも後退していると言わざるを得ない。違憲適合性に踏み込まずに判断しているという意味で、裁判所の職責を放棄している」と批判。川野浩一原告団長(83)は「判決に怒りが込み上げてきた。これに屈することなく、闘い続けていかなければならない」と述べた。

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