栃木県、県高体連に賠償命令 教諭ら3人の賠償責任認めず 那須雪崩事故・民事判決

宇都宮地裁に入る那須雪崩事故の遺族ら=28日午前10時33分、宇都宮市小幡1丁目

 栃木県那須町で2017年3月、登山講習会中だった大田原高山岳部の生徒7人と教諭1人が死亡した雪崩事故を巡り、5遺族が県や県高校体育連盟(高体連)、講習会の責任者だった教諭ら3人に計約4億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、宇都宮地裁であった。浅岡千香子(あさおかちかこ)裁判長は県と県高体連の過失を認め、計約2億9270万円の賠償を命じた。3人については、公務員の職務で損害が発生した場合、国や自治体が賠償責任を負うとした国家賠償法の規定に基づき、請求を棄却した。遺族側は控訴しない方針。

 判決は雪崩事故の発生について、遅くとも事故当日朝の時点で気象状況などを確認していれば「雪崩発生の可能性を認識できる状況だった」と指摘。「雪崩に対する危機意識の希薄さから、3教諭や県高体連が講習会を中止しなかったことが一因と言える」と判示した。

 また事故後の対応に遅れがあったほか、講習会を続行したことについて「被災者らに落ち度は認められない」と言及した。

 一方、引率教諭ら3人については、登山講習会が学校教育の一環として行われたことから「公務員の職務行為で発生した事故で賠償責任を負うものではない」として賠償請求を退けた。

 死亡した引率教諭に対し、県などは自身の生命を守る判断ができたはずとして、過失相殺の適用を主張していた。しかし判決は「引率教諭に過失は認められない」と判断した。

 提訴したのは、死亡した生徒4人と教諭1人の5遺族。雪崩発生を予見できたのに講習会を中止しなかったため、3人には重大な過失があり、事故は「人災」だと訴えた。

 教諭側は国家賠償法の規定を元に訴えの却下を求めたほか、事故当日の気象情報からは雪崩発生が予測できなかったと反論した。

 一方、県や県高体連は賠償責任や過失があることを認めた。ただ、死亡した教諭は自身の命を守る判断ができたはずとして過失相殺の適用を求めていた。

宇都宮地裁

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