「楽しかった 幸せだった」三村青森県知事、20年の県政運営に幕 涙こらえ県庁を後に

職員から贈られた花束を掲げ、万雷の拍手に笑顔で応える三村知事=28日午後4時17分、県庁
万歳三唱で送り出す職員たちに深々と頭を下げる(手前から)青山副知事、三村知事、柏木副知事=28日午後4時22分、県庁

 2003年から青森県政史上最長の5期20年にわたって知事を務めた三村申吾氏(67)が28日、任期を終えて退任した。この日は、事務引き継ぎや職員へのあいさつなどを粛々とこなした後、県庁正面玄関で行われた送別セレモニーに臨んだ。三村氏は、集まった数百人の職員に向かい「一言で言うと楽しかった。一緒に一生懸命働けて、幸せだった。本当にありがとう」と感謝を伝え、涙をこらえながら県庁を後にした。29日には、宮下宗一郎氏(44)が知事に就任し、新たな県政が始まる。

 28日朝の登庁時、「毎日毎日、その日の業務を最善を尽くしてやってきた。今日もいつも通り、しっかり仕事する」と話した三村氏。午前中は宮下氏への事務引き継ぎを行った。

 県の幹部職員約40人を前にした退任あいさつでは、東日本大震災からの復興、医師不足対策、企業誘致、「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界文化遺産登録などこれまでの仕事を挙げながら、「20年の歩みは私一人で成し遂げたものではなく、明るく希望を持って全力で取り組んだ職員一人一人の成果」と強調した。

 三村氏は知事就任以来、危機的状況だった県財政の立て直しに注力してきた。退任記者会見では「元々経済が弱い上に、県の歳出を9千億円台から7千億円台に減らした。得意分野で徹底的に稼ぐ必要があった」と語り、県産農林水産物の売り込み策「攻めの農林水産業」が生まれた背景を説明した。「職員も攻めまくってくれた。危機のときには腹を割って団結できるのが県庁であり、県民性だと感じた」と振り返った。

 退庁時のセレモニーでは、一緒に退任した青山祐治(71)、柏木司(61)両副知事とともに職員から花束を受け取った。職員が万歳三唱する中、三村氏はジャケットの裏地に記された「感謝」の文字を見せた上で「ありがとうございました」と頭を下げ、公用車に乗り込んだ。

 三村氏は旧百石町(現おいらせ町)出身。東京大学文学部卒業後、新潮社勤務を経て百石町長を1期務めた。衆院議員だった03年、故木村守男元知事の辞職に伴う知事選に出馬し初当選。今年1月、5期目の任期満了での退任を表明した。

© 株式会社東奥日報社