障害者の強制不妊手術、福井県は少なくとも75人 半数は本人同意なし…県が進めた「不幸な子を生まない運動」

福井県発行の冊子「福井県の母子保健」の1983年版。「優生保護対策」として、手術の公費負担や相談指導が明記されている

 旧優生保護法(1948~96年)下で障害者らに不妊手術が強制された問題を巡り、福井県内では少なくとも75人に手術が行われたことが6月27日、福井県への取材で分かった。このうち「本人の同意なし」とみられるケースが36人で、全体の48%を占めた。一方、県内で被害者の救済法に基づく一時金320万円の支給認定を受けたのは3人(同日時点)にとどまっており、手術の意味や救済制度を知らず、申請していないケースが多いとみられる。

 旧優生保護法は、3条で本人や配偶者、親族に遺伝性とされた身体疾患などがある場合、本人や配偶者の同意を得て不妊手術を行うと規定。4条と12条は、本人に知的障害や精神疾患などがある場合、手術が必要と判断した医師が都道府県の審査会に申請し、決定を受ければ本人同意のない強制手術を認めていた。

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 県こども未来課が、県衛生統計年報を基に、手術を受けた人数を集計したところ、同意を不要としている4、12条に基づく手術を受けたのは36人、同意前提の3条に基づく手術は39人だった。75人のうち女性が73人、男性は2人だった。

 手術が行われた期間は1951~95年で、最も多かったのは62年の18人。次いで94、95年が各10人、51年が9人だった。他の資料は残っておらず、被害者の住所や氏名、年齢、障害種別などは分かっていない。

 また、県、県医師会、福井地検、福井家裁、民生委員、病院などで構成していた審査会の開催頻度や議論の具体的内容も不明という。被害者の掘り起こしも課題となっており、同課は「手術を受けた人やその家族は、各地の健康福祉センターに相談してほしい」と呼びかけている。

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 強制不妊問題に関する国会の調査報告書では、全国で2万4993人に対し手術が行われ、このうち福井県は66人とされていた。また、福井県が「不幸な子を生まない運動」などとして、優生保護事業を推進していたことを示す資料も明らかになっている。

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