佐世保空襲から78年 継承活動、途絶える懸念 若者参加探る

児童らに佐世保空襲の実相を伝える牛島さん。「若い人にどうやって(継承活動に)参加してもらえるか」と不安を抱えている=佐世保市中里町、市立中里小

 1200人以上が犠牲になった佐世保空襲から、29日で78年を迎えた。長崎県佐世保市では市民有志が空襲体験の継承活動に取り組むが、高齢化が進み人数は減少。長崎原爆のように、若者による活発な継承活動はほとんど見られず、関係者は「若い人にどうやって参加してもらえるかが課題」と、継承が途絶えることを懸念している。
 6月8日、市立中里小の体育館。4年生85人を前に、同市のNPO法人「佐世保空襲を語り継ぐ会」の牛島万紀子さん(71)がマイクを握った。「空襲を経験した人は80代後半になっている。バトンタッチして、語り継がないといけない」
 同会は毎年6月ごろ、市内の小中学校で講話している。今年は16校。牛島さんは戦後生まれで、家族にも空襲の経験者はいない。15年ほど前、空襲で家族5人を失った女性との出会いから、書籍などで空襲の実情を学んだという。
 牛島さんは今後の活動への不安を口にする。同会で活動するメンバーは10人程度。平均年齢は70歳を超え、学校に出向いて講話ができるのは4人ほどしかいない。「高齢で体力的な厳しさがある。NPOはあと何年続けられるだろうか」と漏らす。
 空襲を学校の授業や大学のゼミで取り上げる話は聞くが、校外で活動する若者らによる組織は「聞いた事がない」という。講話の感想で「今後に生かす」という声はよくあるが「実際に継承活動をする組織や機会がない。空襲への理解は広まっているけれど(継承活動へ)身を投じる人がいない」と危機感を募らせる。
 市教委によると、市内の全小中学校、義務教育学校では、総合的な学習の時間などを活用して空襲被害を伝えている。市教委は「内容は各校に任せている」という。
 若者はどう考えているのか。同市出身で、長崎市内の大学に通う溝口萌々子さん(21)は、友人と戦争や平和について話した時「佐世保空襲は話題に上らず、原爆の話だけだった。認識の違いを感じた」という。原爆に関しては、平和教育が充実しており、若者が活動する場もある。「後世に体験を継承するため、佐世保空襲も同じようになってほしい」と話した。


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