那須雪崩事故・民事裁判判決遺族らが会見 "勝訴でも謝罪が終了したわけではない" 「裁判の経緯振り返る」

 那須雪崩事故の民事裁判判決後、遺族らは県庁で会見を開き、県と県高体連に賠償が命じられ、教諭3人に対する請求は棄却された判決について、勝訴したとの考えを述べた一方で「損害賠償の支払いで、亡くなった息子たちへの謝罪が終了したとは考えていない」と複雑な胸の内を明かしました。

 会見には遺族と弁護士が出席し28日の判決を振り返りました。

 遺族らは判決により、雪崩事故が講師たちのミスによる人災と認められたとする一方で3人の教諭による過失責任を認めた謝罪がされていないと不満も述べました。

 また会見では、県が主張していた 毛塚教諭に対する引率者としての過失相殺が認められなかったことなどから判決に対し、控訴をしない方針を明らかにしました。

 加えて遺族たちは、3人の教諭や県などに対し、事故で亡くなった8人一人ひとりに対する謝罪や再発防止のための改善の継続などを求めています。

 一方、県側は、県教育委員会の阿久澤真理教育長が会見を開きました。

 阿久澤教育長は控訴の判断について「判決の内容を精査して近く方向性を出す」と述べるに留めました。

<雪崩事故を巡る裁判のこれまでの経緯について(記者:相馬)>
雪崩事故は、安全を何よりも優先させる学校の部活動で起きた事故です。

事故が発生してから6年3カ月の月日を経て今回、民事訴訟の判決に至ったわけですが、これまで遺族側は、雪崩事故は「自然災害」ではなく「人災」だとして県や県高体連、それに登山講習会の責任者だった教諭3人に過失責任を認めた上で謝罪を求めていました。

【なぜ民事訴訟になったのでしょうか?】
遺族側は2020年3月に話し合いで解決を目指して民事調停を申し立てましたが、成立せず、去年(2022年)2月に提訴しました。

【今回の判決について改めての説明】
今回の判決では、教諭3人と県高体連の過失責任が認められ県に賠償額の増額が命じられました。

その一方で、教諭3人に対する損害賠償請求について判決では国家賠償法上、被害者から公務員個人への直接請求はできず、県などの公共団体に、公務員個人へ請求ができる権利「求償権」があることから、公務員個人の請求について県の裁量に委ねられているとして請求を棄却しました。

【雪崩事故を巡って今後はどのような動きがあるのでしょうか?】
現在、教諭3人が安全義務を怠ったとして業務上過失致死傷の罪に問う刑事裁判が行われていて、教諭3人は 無罪を主張しています。

今回の民事訴訟の判決内容が、刑事裁判にどのような影響を及ぼすのかが注目されます。

そして、今回の判決を通して教育現場の意識改革や制度改善が進み、二度と悲劇を繰り返さないよう再発防止が徹底される教訓となることが期待されます。

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