収穫見込み量の3分の2が寒波で落果… 規格外の柑橘がおいしく生まれ変わる!?

今が旬の河内晩柑。しかし、農家が抱える課題に、生産過程で出る規格外品があります。この規格外品を美味しく有効活用しようという取り組みをご紹介します。

果汁が多く、苦みのないさっぱりとした甘さが特徴の河内晩柑(かわちばんかん)。愛媛県愛南町が全国一の生産地です。

愛南町御荘長月にある農業法人「あいなんマザーズ」でも、旬を迎えた今、県内外への出荷作業に追われています。

1年間丹精込めて育て、出荷の日を迎える河内晩柑。しかし、河内晩柑は風や寒さに弱く、影響を受けると木から実が落ちてしまうという課題に直面しています。今年は1月に強い寒波に見舞われ、特に被害が大きかったエリアでは、収穫を見込んでいた約4.5トンのうち、3分の2の実が落ちてしまったといいます。落ちた実は、外見上問題がないように見えても、水分を失うなどしているため商品にはなりません。

あいなんマザーズ 酒井眞理子社長
「落ちてまだ間がない感じのミカンです。でもやっぱり寒さにやられて、中の実がスカスカになって、果汁がたっぷりでない感じ。収穫直前なので悲しいです」

こうした農家の声をもとに始まった、新たな取り組みがあります。

松山市にある果物の卸売業、MIKAWAYA。ここでは、市場には出回らない規格外の河内晩柑を農家から直接仕入れ、マーマレードに加工しています。

MIKAWAYA 高橋裕一店長
「落下した河内晩柑は少し甘みは足りないんですけど、加工するには十分香りも強く美味しくできあがるので、廃棄してしまうものがもったいない。それを何とかしたいな、と」

河内晩柑は皮の苦みが強いため、マーマレードを作るには、まず1時間ほど茹でたあと水にさらし、苦みを和らげます。

MIKAWAYA 高橋裕一店長
「苦みも一緒に楽しむっていうところがマーマレードの良さだと思いますので、そこも残しつつ製品に仕上げていっています」

店長の高橋裕一さんは、食感を楽しんでもらうため、皮を少し大きめに刻むのがこだわりです。細かい改良を加えて、今の形になるまでは1年半はかかっているといいます。

マーマレード作りの最後の難関は「糖度調整」。気温や湿度に応じて何度も糖度をはかり、理想の味になるよう調整します。そして、砂糖や果汁と一緒に2時間ほど煮詰めたら完成です。

5年前から始めたこの取り組み。去年は規格外の河内晩柑を約1トン仕入れました。

MIKAWAYA 高橋裕一店長
「農家が精魂込めて作ったものが、他の形の商品に変わること自体、すごく喜んでいただけて、こちらとしてもその反応を見るのが楽しいです」

生産者の反応も上々です。

酒井眞理子社長
「別の形で使ってもらったらミカンも活きますので、それはうれしいことです。園地に来て拾ってくださったので落ちた河内晩柑がなくなりましたし、うちとしては本当に助かりました。廃棄する作業も少なくなって」

その評判は徐々に広まり、生産者との交流も増えてきたといいます。

MIKAWAYA 高橋裕一店長
「商品を見た他の農家が『こういうものを作ってくれないか』と相談を持ち掛けてくれる理由になる」

酒井眞理子社長
「被害がひどい年に声をかけてもらったのは今後のためにも良かったと思います。何でも話せるパートナー・MIKAWAYAさんというのは、農家としてうれしいですね」

MIKAWYAには、かんきつ以外にも、栗やシソを栽培する農家からも規格外品の相談を受けていて、新たな商品開発を検討しているといいます。

MIKAWAYA 高橋裕一店長
「農家の相談を受けできないというのではなく、どこまで形になるかは分からないですけど『やってみる』ということを目標にしてやっていきたいと考えています」

“農家が心を込めて育てた作物を無駄にしない”。河内晩柑のマーマレードには、農業を大切にする人たちの思いが詰まっています。

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