税収上振れ3年連続 「菅内閣レガシー」岸田首相に刺さった中西質問

岸田文雄首相(資料写真)

 国の税収が3年連続で過去最高を更新し、2022年度は初の70兆円台に達する見通しとなった。新型コロナウイルス禍での記録更新に岸田文雄首相は収束後のさらなる好転を予測。「防衛強化や少子化・子育て対策への充当」(周辺)を見据えているという。「菅義偉前首相(衆院神奈川2区)の内閣のレガシー(遺産)」(政府関係者)との評も。上振れ分の使途を巡り与野党論戦も活発化しそうだ。

 「V字に例えられるこれまでの景気と違う。2極化を認識し対応してほしい」。22年2月4日の衆院財務金融委員会。新年度予算案の委員会審議初日とあって、トップバッターを務めた自民党の中西健治氏(3区)の質問が霞が関で耳目を集めた。菅内閣下の20年度の税収が上振れ、21年度も同傾向の見通しとなることを引いた。ここでの「2極化」とは「巣ごもり需要で好調な製造」と「対面抑制で苦戦のサービス系」。「VではなくK字型図式だ」として、政府に「下線業種」へのてこ入れを促した。

 中西氏は菅前首相が懇意にする小此木八郎元国家公安委員長の地盤を引き継いで参院からくら替えを果たし、麻生太郎副総裁の派閥で財政金融政策を取り仕切っている。官僚の間には「菅、麻生両氏が予算先議権を持つ衆院へ移った中西氏を介して『ちゃんと手を打て』と岸田首相へサインを送った」との観測が広がった。

 首相に近い自民議員によると「答弁した鈴木(俊一)財務相が中西さんの指摘を岸田さんに伝えた。心に刺さったようで財源策の一つとして岸田さんは上振れを念頭に置くようになった」。「(6月16日に閣議決定した)骨太方針で防衛増税の先送りを示唆したのも、直近の税収見通しを見極めるためだった」という。

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