氷室開き、雪は「少」見物客「多」 コロナ明け活気戻る

雪氷に触って笑顔を見せる児童=湯涌温泉

  ●湯涌温泉に300人

 1日の「氷室の日」を前に、湯涌温泉で30日、夏の風物詩「氷室開き」が行われた。例年より雪は少なめだったものの、新型コロナの5類以降後初とあって、コロナ前と同規模となる約300人の見物客が詰めかけた。地元住民に加えて観光客の姿も目立ち、藩政期の風習にちなんだ行事と雪の涼感を楽しんだ。

 氷室開きは冬場に氷室小屋に貯蔵した雪を夏に将軍家に贈った加賀藩の習わしにちなみ、氷室の日を前に湯涌温泉観光協会が実施している。

 1月に玉泉湖畔にある氷室小屋いっぱいに詰められた雪は、大半がとけてなくなっていた。例年なら半分ほどは残るが、今年は床の一部が見えるほどで、同協会の担当者は「理由は分からないが、今年は少ない」と話した。

 一方、見物客はコロナ禍での実施となった昨年の倍以上に増え、一帯は活気に包まれた。地元からは湯涌保育園の園児10人や湯涌小と芝原中の児童生徒32人が訪れ、雪氷に触って「冷たい」「かき氷みたい」などと歓声を上げた。

 タイ在住の山崎真理子さん(40)は一時帰国に合わせて長女の理央さん(9)らと湯涌温泉を訪れた。理央さんは「思ったより雪が少なかったけど、近くに行ったら涼しかった」と笑顔を見せた。

 氷室小屋では、安藤有(たもつ)湯涌温泉観光協会長があいさつし、村山卓市長と小森卓郎衆院議員が祝辞を述べた。真言宗薬師寺の一二三栄仁住職が読経し、白装束の協会員がのこぎりで雪氷を切り出した。

  ●氷室米も初出し

 今年初めて雪と一緒に保存された「氷室米」も取り出された。4日から湯涌温泉の旅館などで販売する予定で、生産者の坂本厚志さん(61)は「通常のコメ用冷蔵庫より10度ほど低温で保存されており、状態は良い。新名物になってほしい」と期待した。

 県トラック協会青年部会員は、幕府に献上するため雪氷を運んだ藩政期の加賀飛脚を再現した。雪氷を詰めた重さ約60キロの長持を担ぎ、約17キロ離れた金沢駅に向かった。

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