大分トリニータ ポジションレスなプレーで存在感を示す中川寛斗 【大分県】

中川寛斗はポジションに捉われない。「どのポジションで起用されても、どんなシステムになっても自分のプレーは変わらない」と言う。今季の序盤戦はベンチを温めることが多かったが、7節磐田戦で先発の座を射止めると、その後は不動の先発メンバーとして試合に出ている。ポジションはトップ下だったが、20節群馬戦から表記上は1トップに配置された。求められる役割に多少の違いはあれど、信条とするアグレッシブなプレーを続ける。

守備時に与えられた仕事は前線からのプレスのスイッチャーだ。相手のボール保持者に対して猛然と圧力をかけ、ミスを誘発させることもあれば、苦し紛れに前線へ大きく蹴り込ませることもある。19節甲府戦の伊佐耕平の先制点は、中川が相手ゴールキックをカットしたことで生まれたもの。下平隆宏監督は「(中川)寛斗はパスコースを消すようなプレスではない。本気でボールを奪いにいくから相手がミスをする」と強度の高い守備を絶賛する。

試合に向けて調整する中川寛斗

攻撃においても、現在4得点と結果を残している。中川は「開幕からスタメンで出場することはできなくて、もう一度自分を見直した中で『目に見える結果』が僕には必要だなと感じていた」と結果にこだわった。チームの勝利のためにプレーすることは大前提だが、ピッチに立たなければ存在価値を失う。それは18歳でプロになったときから感じていたことだ。155cmの身長はJクラブ60チームの中で最も低い。「僕のように小柄な選手でも一生懸命ボールを追いかけ、自分より体格の大きな選手に立ち向かう姿に、何かを感じてもらえたらうれしい。見る人の心に訴えかけ、誰かの心が動くような選手になりたいとずっと思っていた」

技術の高さは言うまでもない。下平監督は「スペースを見つける感覚が鋭く、チャンスを嗅ぎ分けることに長けている」と評す。今季の得点はポジショニングセンスと戦術眼、卓越したシュート技術がなければ生まれなかったものだ。「自分ができることを追求した」結果にたどり着いたプレースタイルといえる。

リーグ戦は後半戦に突入し、J1昇格に向けて気の抜けない試合が続く。けが人が続出するチームはメンバーを入れ替え、システムを変えながらやり繰りしているが、中川の役割は不変だ。ポジションレスなプレーで「僕がプロになった意味をきちんと体現したい。必要なのは泥臭いプレーや誰よりも走り戦うこと。それが結果につながっていく」と強い覚悟を持ってピッチに立つ。

ポジションに捉われることなくアグレッシブなプレーを追求する

(柚野真也)

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