10年ぶりのポール/改良型ランボの強み/アウディ大集合の理由etc.【スパ24時間 予選後Topics】

 ファナテックGTワールドチャレンジ・ヨーロッパ(GTWCヨーロッパ)第4戦、ならびにIGTCインターコンチネンタルGTチャレンジ第3戦として開催されている『クラウドストライク・スパ24時間レース』は、6月30日(金)にスーパーポールが行われ、既報のとおりフーバー・モータースポーツの20号車ポルシェ911 GT3 R(アンタレス・オー/ティム・ハイネマン/ヤネス・フィティヤ/マッテオ・カイローリ組)がポールポジションを獲得した。翌日7月1日(土)に決勝のスタートを迎えるベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットより、予選最終日のトピックスをお届けする。

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***マッテオ・カイローリは、スパ24時間で10年ぶりとなる非プロクラスカーによる総合ポールポジションを獲得した。それが最後に起こったのは2013年で、当時プロ・アマチームとして参戦していたビーチディーンAMRのアストンマーティンV12バンテージGT3がポールシッターとなった。予選アタッカーはステファン・ミュッケだった。

***フーバー・モータースポーツのチーム代表であるラインハルト・フーバーは、ポルシェ勢が予選時のウエット路面での好調なペースをドライ路面で行われたスーパーポール・セッションに反映できるかどうか「確信がなかった」とSportscar365に語った。彼はカイローリがリードした木曜日の予選Q4を思い出しながら、「マッテオが抜け出したとき、今日(金曜)だけ雨が降ることを願ったんだ!」と続けた。

***ポルシェのモータースポーツ担当副社長であるトーマス・ローデンバッハは、ドライバーたちがレース序盤のインシデントの数を抑えられることを期待している。「過去の例を見ても、24時間レースであることを全員が肝に銘じておくのがいいと思う」と彼はSportscar365に語った。「スタートは慎重に、最初の数時間をクルマをきちんと運ぶ。それからどうなるかは様子を見てみよう」

***過去4年間ポールポジションを獲得し続けてきたメルセデスAMGは、5年ぶりにその座を他メーカーに譲ることとなった。陣営最上位の16番手グリッドを得たマーロ・エンゲル(メルセデスAMGチーム・グループMレーシング)は、「ここに来る前から、かなり厳しいレースになることはわかっていた」とSportscar365に打ち明けている。

***GRTのゴットフリート・グラッサーは、ランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2のドライバビリティが、先代モデル(ウラカンGT3エボ)よりも向上していることが、ファブリツィオ・クレスターニがスーパーポールで7番手を獲得した要因だと指摘した。「シルバードライバーたちがこのクルマで素早くペースをつかんだのは、これがカギだと思う。このクルマは信頼できるドライビングができるし、以前のものよりずっといい。以前のクルマは完璧なプロドライバーのためのマシンだった。新しいクルマはより快適にドライブができる」

■マセラティ新型GT2のレースデビューは2023年最終戦

***金曜日にスパ・フランコルシャン・サーキットで一般初公開された『マセラティGT2』は、ポール・リカールで開催されるファナテックGT2ヨーロッパ・シリーズの今季最終戦で実戦デビューする予定だ。

***マセラティ・コルセのジョバンニ・スグロ代表は、レースデビューはカスタマーチームと一緒に行われる予定だが、参加台数はまだ決まっていないと述べた。同氏はSportscar365に対し、「(カスタマーの)関心は非常に高い。商業的なプロセスにあるため、まだ(台数は)明確には決まっていない」と語った。

***マセラティGT2の車名には、開発ベースとなったロードカーにちなんで、以前は『MC20 GT2』が使われていた。スグロはこの変更を認め「より合理的な名称にしたかった」とその理由を明かしている。

***アウディがカスタマーエントリーのほとんどをロアパドックとピットレーンに配置することを決めたことについて、カスタマーレーシングの責任者によれば、全員が“ひとつのキャンプ”にいるためだという。「F1のピットに10台分の場所を求めるのは不可能だった」とクリス・ラインケはSportscar365に語った。

***ラインケはピット位置の長所と短所を挙げた。「明らかに、ピット出口に近いのでタイヤはそれほど冷えないが、マシンが壊れた状態でピットインする場合にはピットまでの道のりが長くなる。私たちが初めてこの方法を選んだのは、すべてのクルマを一緒にしたかったためだ」

オールージュ側のピットに集められたアウディ勢 2023スパ24時間

■フェラーリ296 GT3の納車が間に合わず

***チームマネジャーのベルナルド・セラ曰く、AFコルセのプロ・アマチームがフェラーリ488 GT3エボ2020を走らせている理由は「新車の納車が少し遅れた」ためだという。同チームはイタリア、ミサノで開催されるGTWCヨーロッパ・スプリント・カップに合わせてフェラーリ296 GT3に乗り換える予定だ。

***サン・エナジー1レーシングからスパ24時間レースにデビューするチャズ・モスタートは、将来的にさらに多くの国際的な耐久レースに参戦したいと考えている。RSCレプコ・オーストラリア・スーパーカー・シリーズの“エースドライバー”であるモスタートは、2020年のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権デイトナ24時間でBMW M8 GTEを駆りGTLMクラス優勝を飾った他、BMWとの提携の一環としてIGTCカリフォルニア8時間にも参加した経験を持つ。

***モスタートはSportscar365に次のように語った。「もちろん、もっと海外のレースに参加したい。中でもマイルストーンとなるようなイベントにはかなり興味がある。オーストラリアでフルタイムレースをしているときは別のシリーズにコミットするのは難しいけど、こういう耐久タイプのイベントは好きで、12時間や24時間のレースが大好きなんだ。まだ機会は少ないが、毎回とてもいい経験になっている。もっとやってみたいけれど、家にいるのも好きなんだ。だから年に2、3回が理想かな」

***アダム・オシエカは、負傷したケニー・ハブルの代役を務める予定だったリアム・タルボットに代わり、サンエナジー1レーシングのドライバーとして遅れて招集され、金曜夜のウォームアップ・セッションに参加した。

***K-PAXレーシングは10月のインディアナポリス8時間への出場を断念した。プログラム・マネージャーのダレン・ロウはSportscar365に対し、GTWCヨーロッパ・エンデュランス・カップのキャンペーンのためにチームの機材はすべてヨーロッパにあると説明した。「いくつかのセミトラック数台を除いて、すべてがヨーロッパにある! 現在、我々はヨーロッパに完全にコミットしているんだ」

***チームの半数以上がアメリカに拠点を置いているため、今年の取り組みは物流面でのチャレンジとなった。「往復するのは大変な作業だ」とロウ。「レースだけでなく準備作業もある。5、6日早く来て、すべての準備をし、その後2、3日滞在しなければならない。私たちがここにいるのはレースウイークエンドだけではないんだ。みんな、この仕事のために時間を割いている」

***24時間レースには70台のマシンが参戦するが、メインストレートに面するF1ピットの空きガレージには『アウディR8 LMSウルトラ』が1台置かれている。このマシンはコムトゥユー・レーシングのチームオーナーであるジャン-ミシェル・ベアトが所有するもので、以前はWRTが走らせていた。

71号車フェラーリ296 GT3(AFコルセ) 2023スパ24時間

■ニュルブルクリンク、ル・マンに続き今季3度目の24時間レース制覇なるか

***AFコルセのロバート・シュワルツマンは、チームメイトのアレッシオ・ロベラが51号車フェラーリ296 GT3で2番手グリッドを獲得した後、フロントロウスタートを「とてもポジティブなこと」と評した。「アレ(アレッシオ・ロベラ)はクルマをフロントロウに持っていくという、とても良い仕事をしてくれた。(スタート時の)混乱を避けるために極力前に居たいからね」

***GTレーシングカーの責任者であるフェルディナンド・カニッツォによると、71号車フェラーリ296 GT3が予選47番手に留まったのは、予選での大渋滞が「明確かつ重要な役割」を果たしたという。「雨量と水しぶきが非常に多く、トラフィックの中にいたクルマはラップタイムを稼ぐことができなかった」と彼はSportscar365に語った。「多くのブロンズドライバーが(予選ポジションで)前にいるのは、彼らがドライコンディションで予選1回目を走ったためであり、アベレージは彼らにとって有益だった」

***AFコルセが残りのIGTCラウンドのいずれかにプロクラスのフェラーリを投入するかどうかは、現在のところわかっていない。チーム代表のアマト・フェラーリは、ガルフ12時間レースが選択肢のひとつになる可能性を示唆した。また、カニッツォはフェラーリがGTWCヨーロッパ以外のトップレベルのGTレース参戦について「あらゆる機会を模索することにオープンな姿勢だ」と語っている。

スパ・フランコルシャンで一般初公開されたマセラティGT2 2023スパ24時間

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