長崎・男児誘拐殺害20年 現場訪れ市民ら思い思いに悼む

事件から20年。地蔵堂に向かって手を合わせる市民=1日午後0時18分、長崎市万才町

 長崎市で2003年、4歳男児が12歳の少年に誘拐され、殺害された事件から1日で20年。事件現場近くにある同市万才町の地蔵堂付近には複数の花束やジュースが供えられ、市民らが手を合わせ男児を悼んだ。
 小雨が降りしきる中、多くの人が足を止めた。今朝の新聞を読み、初めて足を運んだという同市春木町の大学生、古場愛梨さん(18)は「私は生まれてなかったが(事件は)ニュースで知っていた。知らない世代にも伝え、月日がたっても風化させてはいけない」と語った。
 「来ることができる時に来て、手を合わせている」。県内の中学教員、篠﨑千春さん(28)は母親と訪れた。「この場所を通ると思い出す。同じ事件が起きないために、いろんな面で子どもたちを支えていきたい」
 事件を機に発足し、子どもの見守り活動などに取り組む県警の「学生サポーター」の大学生8人も訪れ黙とう。今年から加わった長崎純心大4年の花田きり子さん(21)は「20年たった今こそ、私たちは事件についてしっかりと考えていかなければいけない。子どもたちに命の大切さを伝えていきたい」と誓った。
 事件後、地蔵堂を設置した同市立山1丁目の井村啓造さん(76)は僧侶に読経してもらい、手を合わせた。「あの日のことを記憶にとどめてほしい。命がある限り(供養を)続けていきたい」。20年の月日を思いハンカチで涙を拭った。
 共に訪れた同市桜町の自治会長で自営業の山﨑秀人さん(74)は当時を振り返り「ヘリが飛んでいた。何事だろうと思ったが、(事件を)知った時、衝撃的だった」。現場をじっと見つめ「同じような事件が起きないように、地域でも(子どもを)サポートしていくことが大事」と言葉に力を込めた。


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