「書き終えて放心状態。前島密に出会えて幸せ」 連載小説「ゆうびんの父」作者・門井慶喜さん しみじみと 新潟上越市で講演会、続編を期待する声も

小説「ゆうびんの父」について講演する門井慶喜さん=7月1日、上越市西城町3

 新潟県上越市出身で郵便制度の礎を築いた前島密(ひそか)を描いた新潟日報朝刊の連載小説「ゆうびんの父」の作者、門井慶喜さんの講演会が7月1日、上越市で開かれた。小説は6月28日付朝刊で360回の連載を終えたばかり。「書き終えて放心状態になった。前島に出会えて幸せだった」と振り返った。

 講演会は地元住民らでつくる前島密生誕の地献碑祭実行委員会が主催し、約200人が集まった。

 門井さんは小説を書く苦労話を披露した。「84歳で亡くなった前島の生涯を全て描くと、長大な小説になってしまう。どう終わらせるかを悩んだ」と明かした。

 小説は母と子で過ごした上越での幼少期から始まり、郵便制度が始まった後に亡くなった母との別れをクライマックスに仕立てた。「母への愛、そして最先端の技術を学ぶ向学心をどう描くか考え抜いた。見事に話を着地できたと思っている」と笑顔で話した。

 講演を聴いた前島記念館(上越市下池部)の利根川文男館長は「前島の人柄が分かる話だった。門井さんに前島の後半生も書いてほしい」と期待していた。

© 株式会社新潟日報社